ミケランジェロのダビデ像!だけではない美術館
-アカデミア美術館のなりたち
アカデミア美術館は、元々コジモ1世が1563年にアカデミア-Accademia delle Arti del Disegnoを設立した事に始まります。
その後、1784年にピエトロ・レオポルド大公(マリーアントワネットの兄)の命により再編成。現在の美術学校であるアカデミア-Accademia delle Belle Artiが誕生。
1786年にはピエトロ・レオポルド、更に1810年はナポレオンによって、それまで数多くあった教会が廃止されます。
教会廃止によって、これらの教会の祭壇画など美術作品がアカデミアに持ち込まれました。
1873年になると、ヴェッキオ宮殿前にあったダヴィデ像が保存の為に移動してきて、現在のアカデミア美術館のイメージを決定付けます。
“アカデミア美術館”としては1882年にオープンしました。
建物はエミリオ・デ・ファブリスによる設計。
特にダヴィデ像が置かれた展示室は遠くからも近くからも、また作品の周囲をぐるっと360°鑑賞することができる空間は教会の身廊を模しています。
アカデミア美術館内部
-楽器美術館 Museo degli Strumenti Musicali
アカデミア美術館内にある美術館です。
チケットチェック後、右奥に進むと見つかります。
メディチ、ロレーヌのコレクションがケルビーニ音楽院に渡り、それが2001年より公開されているものです。
メディチ家の紋章入りの世界で唯一の原型を保ったストラディバリウス、メディチ家の為に発明されたピアノなど、貴重なコレクション約50点が見られます。
メディチのストラディヴァリウス /ケルビーニ楽器美術館
メディチ家の大公子フェルディナンドの為に制作されたもので、メディチの紋章が指板に見られます。世界で唯一現存するオリジナルの姿を保ったヴィオラのテノール。元々はクインテットを構成していました。アカデミア美術館入り口からすぐ右にある通路を通るとこのヴィオラのある楽器美術館に入れます。
楕円スピネッタ
チェンバロよりも小さいスピネッタ。オリジナル。奏でる事のできるレプリカが下の引き出しの中に入っています。(勝手に触れません)
縦型ピアノ
ドメニコ・デッラ・メーラ制作。現存する縦型のピアノとしては世界最古。ピアノは1700年代の終わりにフィレンツェで、フェルディナンド太公子に仕えてたバルトロメオ・クリストーフォリによって発明されました。現在は上のカバーが外された状態で展示されています。
-コロッソの間 Sala del Colosso
この部屋の真ん中にジャンボローニャがランツィのロッジャ(シニョリーア広場)の為に制作した”サビニ女の略奪”の原型があります。
“サビーニ女の略奪”は大きな彫刻なので、”大きな”を意味する”コロッソ”からこの部屋の名前が付きました。ローマのコロッセウムもネロ皇帝の大きな彫刻があったから来た名前はないかと考えられます。(コロッセウムの呼び方はフラウィウスの円形競技場-Amphitheatrum Flavium)
話がずれましたが、この部屋には主に1400年代の祭壇画コレクションがあります。ボッティチェッリ、ロ・スケッジャ、ペルジーノ、フィリッピーノ・リッピなど。
ジャンボローニャ サビニ女の略奪
美術館に入って最初の部屋コロッソの間。ランツィのロッジャにある大理石製の作品の原型です。完成品の大理石像は石工に作らせているので、こちらの原型がより彫刻家の手に近いとも言える貴重な作品です。美術館奥にある石膏展示室の作品にも同様の事が言えます。
ロ・スケッジャ -カッソーネ アディマーリ
マザッチョの弟で、ロ・スケッジャというあだ名のジョヴァンニ・ディ・セル・ジョヴァンニの作品。”長持ち-カッソーネ”という家具の一部と言われていましたが、現在は横に長い椅子の背もたれ部分に描かれていたものだと考えられています。アディマーリは15世紀あたりの有力な貴族の名前です。描かれているのは1400年代の貴族の婚姻の風景。時代ものの映画などでは史実に反する衣装を俳優が身に纏うことも多いのでつい勘違いしがちですが、当時は私たちの想像を超える華やかさであったことがうかがえます。
-奴隷のギャラリー Galleria dei Prigioni
奴隷のギャラリー
手前には奴隷像などが並び、一番奥に見えるのがダヴィデ像。計画ではシニョリーア広場ではなくもっと高い場所に置く予定だったので、それを再現できるように遠くからも鑑賞できるように設計されています。
ミケランジェロ -奴隷アトランテ
ローマ教皇ジュリオ二世(ユリウス二世)の霊廟の為に制作され、未完のままに終わったミケランジェロの奴隷像群の一体。現在ローマのサン・ピエトロ・イン・ヴィンコリ教会にある霊廟は当初の計画から何回も変更され、かなり小さくなっています。結局使われなかった奴隷像のうち4体がアカデミア美術館にはあります。
ミケランジェロ -奴隷バルブート(髭の男)
同じくユリウス二世の霊廟の為の奴隷像群の一部。ミケランジェロは石工に任せず自らの手で石を彫って作品を完成させます。なので、ミケランジェロ自身の手によるノミ跡が表面に見られます。
教皇ユリウス2世の霊廟の為に制作され完成を見なかった奴隷像群が4体。ミケランジェロが「墓の悲劇」と呼んだその仕事の一部です。他、聖マタイ、パレストリーナのピエタ、ポントルモがミケランジェロの下絵を元に描いた作品もあります。
-ダヴィデのトリブーナ Tribuna del David
ダヴィデ像のある場所。いろいろな角度から鑑賞する事ができます。
説明やエピソードは沢山ありすぎるので省略。ガイドツアーではちゃんと説明します。
ミケランジェロ -ダヴィデ像
ヴェッキオ宮殿前(本来の展示場所)にある作品は複製品で、こちらが本物。19世紀後半に作品保護の為に移設されました。現在美術館内ではこの作品を鑑賞するために設計された場所にあります。ぐるっと周りを一周してどの角度からも鑑賞できるようになっています。展示室の設計をしたエミリオ・デ・ファブリスはフィレンツェ大聖堂のファサードもデザインしています。
-1800年代の間 Salone dell’Ottocento
通称”石膏室 Gipsoteca“。
1800年代を代表する彫刻家であるバルトリーニ、パンパローニの作品原型が展示されています。
ミケランジェロは直接大理石を彫っていたのに対して、1800年代は彫刻家が制作した原型を元に石工が大理石に置き換える方法が主流。
展示されている石膏像の完成品はフィレンツェの街の中だけでなく様々な場所で見る事ができます。
壁に残るポントルモの壁画からは、もともと聖マタイ病院だった様子が伺えます。
石膏室 ロレンツォ・バルトリーニ
ピサのカンポサントの中にある彫刻の原型。バルトリーニが、ジョヴァン・フランチェスコ・マスティアーニ・ブルナッチの墓の為に制作したものです。ピサの完成作品↓
病院のエピソード – ポントルモ
アカデミア美術館として使われる前、聖マタイ病院だった時代の名残。石膏室の壁にあります。
-1200,1300年代の間 Sale del Duecento del Trecneto
順路に沿って行くと、ブックショップ手前にある小さな3つの部屋。
ゴシック時代のコレクションで、ジョット派、ジョヴァンニ・ダ・ミラーノ、ジョッティーノ、オルカーニャの作品などがあります。
タッデーオ・ガッディ -キリスト 聖フランチェスコの生涯
ジョットの弟子、タッデーオ・ガッディによる沢山のパネル作品。サンタ・クローチェ教会の聖具室にあったもので、おそらく聖遺物を入れる為の木製の家具を飾っていたものであろうと考えられています。
ジョヴァンニ・ダ・ミラノ -ピエタ
ゴシック時代のフィレンツェに新しい感情表現の要素を持ち込んだジョヴァンニ・ダ・ミラノによる作品、マリアと福音記者ヨハネがキリストの死に涙を流しているのが近くで見ると分かります。
-フィレンツェ1370-1430年の間 Sale Firenze 1370-1430 /2階(イタリア式1階)
ブックショップを過ぎ、出口近くの素通りしてしまいそうな場所にある階段を上るとあります。(エレベーター有り)
夏に冷房が効いていてベンチがあるのが良いという事の他に、フィレンツェを代表するロレンツォ・モナコ、ニッコロ・ディ・ピエトロ・ジェリー二、ビッチ・ディ・ロレンツォ、など、割とマニアックな画家の作品が並びます。(重要コレクションです!)
アカデミア美術館二階 ゴシック絵画コレクション
(イタリア式一階)ミケランジェロの作品のある地上階に比べるとあまり人気がありませんが、豊富なゴシック絵画コレクションがあります。
ロレンツォ・モナコ -ピエタ
2階のゴシックコレクション展示室にあります。キリスト受難のシンボルが沢山描きこまれています。
アカデミア美術館 インフォメーション
-所在地
Via Ricasoli, 58/60 Firenze
-開館時間
火-日 8:15-18:50
-休館日
月曜日、1月1日、5月1日、12月25日
まれに職員の会合やストライキなどにより臨時で閉まる事があります。
-入館料
大人: 20ユーロ
17歳以下: 無料
時間指定予約料: 4ユーロ
(6〜17歳は予約料のみ4ユーロ、5歳以下は予約不要で無料)
※観光ローシンズンの平日は予約なしでも時間帯によりスムーズに入館できる場合が多いです。逆に観光ハイシーズンは予約していても30分程待たされる事もあります。
※フィレンツェカード利用だと入館料はカードに含まれますが、優先入館は廃止になりました。早く入りたい場合には時間指定予約を別にする必要があります。
-所要時間
30分〜2時間
-アカデミア美術館オフィシャルページ
–Galleria dell’Accademia di Firenze–
-アカデミア美術館チケット予約購入公式ページ
–The ticketing officiale website for state florentine museums–
-注意事項
- アカデミア美術館にはクロークがありません。大きなカバンやリュック、ヘルメットなどは持ち込み禁止。長傘はチケットチェック時に預かってもらえます。
- 水の持ち込みは500mlまで
- 入るとすぐにメタルデテクター(金属探知機)を通ります。その時に危険と判断された刃物やハサミは、その場に預ける事になります。