“十字軍”を映画から多角的に史実とファンタジーでキリスト教

gustavo aceves

“聖なる土地でのキリスト教のアドベンチャー、現実とファンタジーの間で”

という、面白い(マニアックな)イベントに行ってきました。
上記のやたら長いイベントタイトルはL’avventura cristiana in Terra Santa fra realtà e fantasiaの直訳です。

最初にCinema La Compagnia というカヴール通りにある映画館で十字軍に関連する映画を観賞した後、午後にフィレンツェの街を歩きながらその軌跡を案内してもらう、というもの。

映画は、”Brancaleone alle crociate” , “Le crociate”,  “La battaglia di Hattin”, “Indiana Jones e l’ultima crociata” の4本。上映映画の全編を観る訳ではなく、専門家でもある主催者の説明入りで参考になるシーンをカットしてを観ます。

1、Brancaleone alle crociate /「十字軍のブランカレオーネ」1970年 マリオ・モニチェッリ監督

ウンブリアにあるトラジメーノ湖で撮影されたシーンから始まりました。どんな様子で十字軍に向かったのかが分かるようにという意図のシーン選択です。整然と軍隊を組んで行ったわけではなく、、映画ではちょっと笑える「おお、神よー!」という、まとまりがなくてちょっと滑稽な様子が描かれているコメディ映画です。

2、Le crociate – Kingdom of Heaven /「十字軍 – キングダム・オブ・ヘブン」2005年 リドリー・スコット監督

観ている最中にあった考古学者の説明によると、これはおそらく北アフリカのモロッコあたりで撮影していて、砂漠の真ん中にいきなり城が建っているけれども、決してそんな事はない。直接発掘に行った経験からすると、周りにはからなず農村や住宅が広がり、水のある場所に街はつくられているのだからもっと緑だし、小高い丘にあったりするよ、と。

3、La battaglia di Hattin /「ヒッティーンの戦い」?年 ?監督

がんばって理解しようにも、アラブな言葉で「はっmなーそいいつおs、ぷっそいえつんそいうt。」としか聞こえません。こちらも説明によると、アラブの視点で見た十字軍との戦い。前の二本に比べて、暑さ、乾き、埃、に苦しめられる様がリアル。実際イスラムの軍は上流で水をせき止めたりして十字軍を弱らせておいてから、谷間に追い込み一網打尽にするという戦法をとりました。

4、Indiana Jones e l’ultima crociata / 「インディージョーンズ最後の聖戦」1989年 スティーヴン・スピルバーグ監督

この映画はおとぎ話として楽しみましょうという趣旨です。キリストの聖杯を探すストーリーはもちろんファンタジー。邦題の「〜最後の聖戦」は、英語の原題からだと「最後の十字軍(の戦い)」の方が忠実になりますね。”聖なる戦い”だと何の戦いを指すのかがあいまいです。

映画は非常に歴史を理解する上でのリアリティーを与えてくれますが、史実には反したりしますので、こういう専門家の解説はとても面白いです。

説明があってこそ気づくこと、例えば、砂漠で中世の騎士がよく着ているあの暑くて重そうな鎧と鎖かたびらはありえないそうです。「彼らもそこまで頭がおかしくはなかった。」との専門家のコメント。確かに鉄板のような鎧をあの太陽の下に置いておけば、目玉焼きがすぐに出来てしまいそう。生身の体をその中に入れてどうするよ…。

このイベントに誘ってくれたのはイラク出身の友達だったのですが、彼も午後の部で、十字軍に迎え撃った側(アラブ側)の視点を解説しました。

そういえば、

アラブが見た十字軍

1年くらい前に買ってまだ読んでない本、「アラブが見た十字軍」

日本の書籍をどうしても購入したい場合、送料をまとめたくて色々注文してしまいがちです。そのまとめ買いの本の一冊です。これを機会に読みたいと思います。

この本のさわりで、十字軍の事をアラブ人は「フランク」と呼んでいたとあります。フランス出身でなくイタリアでもドイツでも一緒くたに全員「フランク」と呼んでいたのだそう。そのこともイラクの友人も説明していました。

そして、今回初めて知ったのことだったのですが、十字軍を指すCrociataクロチャータという単語、これは1800年代の発明だそうです。あの一連の戦争の概念も現在私たちが抱いてるイメージも、その1800年代のプロパガンダであって、もっと実際は状況が複雑であったという事です。

その複雑な状況はやっぱり複雑なだけあって、一言では説明できないものがあり、話し出したら止まらない教授や専門家たちは、マイクを持ったら周りの人を困らせるほど(笑)話し続けていました。その辺はおしゃべり上手のイタリア人。

最初の十字軍から約1000年経ちますので、その長い期間のほんのちょっとだけ登場した十字軍によって建てられた城などを発掘する困難とか、現在から見ると十字軍は負けて土地から追い出される事になると知っていても、もちろんその時は永遠にエルサレムを守るつもりでいたのだ、とのこと。エルサレムがアラブ側に奪回されても、その土地にはキリスト教徒は残って自らの宗教を信仰する事を許されていて、全くキリスト教会とは関係ない行政区画の一部からキリスト教徒の墓が見つかったり、など。
エルサレムのイスラエル建国以前の状況とかも考えさせられる史実です。

複雑な難しい状況を解決に導くのは、実はとても簡単。 それは一つの大きな決断をする事!でも、大きな決断はいつも破壊的だね。」という小ネタで一番話が長かった教授がまとめていました。(日本語に直すとブラックユーモアなのが伝わりにくいかも?)