フィレンツェには地元なおばけの伝承があります。
ジネーヴラ・アミエーリという女性が主人公。
同じ名前でレオナルド・ダ・ヴィンチが描いたジネーヴラ・デ・ベンチみたいな今でも名の知れた人ではなく、裕福な貴族の家でつつましく真面目に育った女性です。
ジネーヴラ・アミエーリの生きた1400年代初頭、貴族の女性の結婚は、商業上の取引同様、両家の戦略だったり持参金の量やらで勝手に親が決めました。
ジネーヴラもご多分にもれず、想いを寄せる人がいたにも関わらず、とあるやり手のビジネスマンの元に嫁ぐ事になってしまいました。
従順なジネーヴラはこの男性と結婚しますが、夫はビジネスの事しか頭にない冷たい態度。
失意の中、食事もままならず日に日に弱ってゆき、周囲の看護のかいなく、そのまま息を引き取りました。
お葬式が執り行われた後、不幸なジネーヴラの遺体は家族の礼拝堂に安置されましたが、なんと、その後、ジネーヴラは目を覚まします!
最悪な目覚め、親類の亡骸と共にいる自分を発見。
なんとか大理石の蓋を開けて脱出し、埋葬用の白い布を纏ったまま、まず助けを求めに行ったのは、夫の家。
扉をたたいて、帰宅を知らせたところ、痩せこけて青白い顔をした死装束のジネーヴラを窓から見た夫はびっくり仰天。
「お、おばけだー!神よ、お助けを!!!」と、生きているとは分かってもらえず、結局家には入れてもらえませんでした。
次に向かったのは、実家。
扉をたたいて、帰宅を知らせたところ、痩せこけて青白い顔をした死装束のジネーヴラを窓から見た母親は仰天。
「お、おばけだー!神よ、お助けを!!!」と、生きていると分かってもらえず、結局家には入れてもらえませんでした。
今や誰からもおばけ扱いの彼女、行くあてもなく、最後に向かったのがようやく愛する人の住むところ。
恋人はびっくり仰天したものの、家に入れて食事を与え、服を与えます。
ジネーヴラはようやく生き返った気分だったことでしょう。
しばらくして、死んだはずの妻が生きていて、しかも他の男の家にいると知った夫は怒って二人を訴えます。
ほんの束の間の幸せだったのか、、。
しかし判決は「終油の秘蹟を施した者は、もうすでに死んだということになる。死によって結婚の契約は解かれているので、もはやジネーヴラは妻ではない。」と、洒落たものでした。
そんな訳で、ジネーヴラは過去とは切り離され、晴れて二人は初婚として結婚をする事ができました。
めでたしめでたし。
(伝説にはいくつかのバージョンが存在します)
おばけ伝説の実際の場所
- フィレンツェ大聖堂の地下にあるサンタ・レパラータ教会 – ジネーヴラが埋葬されてしまった場所。
- Via del Campanile – ジネーヴラが生き返った後におばけの見た目で歩いた道。Campanile(ジョットの鐘楼)近くの小道。
- Via dei Rondinelli – 2回目に結婚した愛する人(アントーニオ・ロンディネッリ)の家
グーグルマップでこれらの通りの名前を検索すると出てきますので、現地を訪れた際は探してみると面白いかもしれません。