前回、『ラヴェンナへの旅、モザイクを肉眼で観よう!』からの続きです。
聖ヴィターレ教会から次は電車に乗って聖アポッリナーレ・イン・クラッセ教会に行こうと思っていたけれども、変更。
先にこのネオニアーノ洗礼堂 Battistero Neoniano
暑すぎて、鑑賞する時間よりも歩く時間短縮を優先しました。

ラヴェンナは西ローマ帝国の終焉近くオノーリオ(ホノリウス)皇帝の時代に、防衛の為に有利だったので首都になっています。オドアクレ率いるエルリ族が最後の皇帝ローモロ・アウグストを倒しここを支配。長くは続かず、テオドーリコの東ゴート族がやってきて、それからまた7世紀になって東ローマ(ビザンチン)帝国がジュシティニアーノ1世(ユスティニアヌス)により勢力拡大。ここもその一部へ。
という経緯の最初の方、5世紀前半のものがネオニアーノ洗礼堂。最初は8角形の屋根だったものを、クーポラに建て直して天井のモザイクを施したのが5世紀後半。このクーポラが軽量化の為に中空になったテラコッタのチューブを使っているのは・・見ただけでは全く分かりません、当然ですが。
前回のブログに書いた聖ヴィターレ教会のクーポラもこのチューブを使った工法だという事を、後から勉強をし直して知りました。セメントを使う場合に適しているものです。二重構造になっているフィレンツェにあるブルネッレスキのクーポラとは全く違うものですね。
モザイクの真ん中の、ヨルダン川にはいって洗礼を受けるキリスト。ヨルダン川の擬人化された姿が右の端っこにいます。
こちらは、細部。

この色合いとデザイン、ルイス・ウェインの描いた猫とか、もしくはミッソーニのデザインを思い起こさせられてしまうのは私だけでしょうか??
そして、ネオニアーニ洗礼堂のお隣にあるのは、
大司教美術館 Museo Arcivescovile

上の写真は、大司教美術館内にある、大司教礼拝堂。
特徴的な図像です。
キリストが戦士の姿で表されており、蛇とライオンを踏みつけています。
これは、キリスト教でもアリウス派であったテオドーリコの時代にあって、それに対抗する図像。蛇とライオンが異端のアリウス派であるとされています。
この場合は天国を表すという鳥がたくさんの天井がとってもきれい。
象牙で作られている、大司教座↓もあります。

この象牙製の大司教座は、聖ヴィターレ教会の中のあの足踏み大会モザイクに登場していたマッシミアーノ大司教のもの。
下の写真の頭の上に文字が書かれている人(右から三番目)です。

東ローマ帝国時代のもので、真ん中に立っているのはジュスティニアーノ皇帝。
その後に、ラヴェンナ大聖堂にも行きましたが、残念ながらお昼は閉まっており、移動。途中でダンテの墓参りをしてから駅へ。
ラヴェンナ駅からクラッセ駅は数分。中学か高校生くらいのグループが、電車のアナウンスで「Siamo in arrivo a Classe -クラッセ駅にまもなく到着します。」っていう自動音声に、「Siamo ancora in Classe! まだクラッセ(教室)だ!」と冗談を言っているのが、冷房の全く効いていない車内に涼やかさを運んでくれたのでした。
さ、駅から目当ての教会へ徒歩で向かいます。完全に砂漠の気候?!という1時過ぎで、木陰を選んで数メートルの遠回りをするか、まっすぐ進むか、そんな事も死活問題になってきました。
とりあえず無事に到着、
サンタポッリナーレ・イン・クラッセ聖堂 Basilica di S.Apollinare in Class


やっぱり写真では全く魅力が伝わらない美しさ。なので、説明抜き(!)
しばし、美しい夏の日差しに照らされたモザイクを鑑賞した後、クラッセ駅に戻り、再びラヴェンナへ。
ラヴェンナ駅に到着後、再び徒歩。ぜひみておきたかった場所に向かいます。
その途中にあったのが、
ブランカローネ要塞 Rocca Brancalone

ブランカローネ要塞は15世紀のものだそうです。
中が公園になっていて、もしかしたら向こう側へ渡る近道になるかも?と中へ入りましたが、単なる遠回りで終わりました。
炎天下、がんばります。
だんだん日差しに体力を奪われてきているのを感じます。
そしてなんとか・・・到着!
テオドーリコの霊廟 Mausoleo di Teodorico

墓地愛好家としては、たまらないこの姿。
たまに他の場所でも同じ形をした墓がありますが、その元ネタがこちらテオドーリコの霊廟。
フィレンツェ近くのアッローリ墓地にもありました。このブログでは墓地の話題が頻出していますが、実はまだ紹介していない墓地もいくつかありまして、その一つがアッローリ墓地。書きすぎると墓専門のブログになってしまうので、自粛しています。
霊廟の建物は、一階と二階部分、別々の入り口から内部に入れます。

二階部分↑。
真ん中にあるバスタブのような形の中に、テオドーリコの亡骸が収められていたそうですが、現在は空になっています。
ポルフィドという硬い赤い石、ローマ皇帝もよく好んだ石が使われています。

屋根はなんと、継ぎ目はなく一つの石でできていています。屋根のしたの模様のところは、東ゴート族である彼の出自を示しています。
で、最後に向かったのは、
ラヴェンナ市美術館 Museo d’Arte della Città di Ravenna
場所的に、来た道を駅まで戻って、更に歩かねばなりません。
日陰のベンチに腰を下ろして、休憩してるのに汗が全身から滲んでくる状態なので、なるべく短い距離を歩こうと、グーグルマップさんに聞いてみました。
お答えは、「今来た道を引き返すのではなく、駅の裏側の道を通るように。それがベスト!」
素直に従いました。
間違いでした。
日陰は一切ない車道と運河の間。
砂漠を行軍中だと妄想するより仕方がありません。
目的地へ到着一歩前で、事前にチェックしていた教会に出くわしました。暑過ぎて忘れていた!
聖マリア・イン・ポルト教会 Basilica di Santa Maria in Porto

日差しから逃れて吸い込まれるように教会内へ。

教会内には、ギリシャの聖マリア像が祀られています。
このお姿、1100年ごろにコンスタンティノープルから奇跡的に運ばれてきた像だそうです。
この教会の中では地元の信者さん数人が静寂の中で熱心にお祈りをしていて、外に比べて空気が静まり返って涼しく、異次元に迷い込んだかのような感覚でした。
若干順番があべこべになりましたが、聖マリア・イン・ポルト教会の隣にあるのが、ラヴェンナ市美術館。
ここで見たかったのは、バルトゥス。

このバルトゥスの作品は、モザイクでできているんです。

他にも多くの近現代のモザイク作品がありました。

日差しの関係であまりよく見えてませんが、シャガールの作品をモザイク化。モザイクでの表現性にびっくり。
もしや、これは…

モザイクで出来たパニーノ、かわいい!