教会の呼び方はイタリア人も混同しがちでDuomo, Basilica, Cattedrale, Collegiata, Cappella, Oratorio… と色々あります。
ブログや各所紹介の度に補足説明を付けるのもややこしくなるので、こちらのページにまとめました。
ただ言葉の意味は時代によっても宗派によっても違うし、複数意味があったりもします。ここには代表的なローマカトリックでの意味を書きます。
もくじ
- 1 教会/聖堂/大聖堂/礼拝堂…の呼び分け
- 1.1 Chiesa キエーザ: 教会 聖堂
- 1.2 Duomoドゥオーモ: 大聖堂
- 1.3 Cattedrale カッテドラーレ: 大聖堂 司教座聖堂
- 1.4 Basilica バジーリカ: 聖堂, 教会
- 1.5 Collegiata コッレジャータ: 長い名前(以下)
- 1.6 Cappella カッペッラ: 礼拝堂, 小聖堂, 祭壇, チャペル
- 1.7 Tabernacolo タベルナーコロ: タベルナーコロ(?)
- 1.8 Santuario サントゥアーリオ: 至聖所
- 1.9 Oratorio オラトーリオ: 祈祷所, 小礼拝堂
- 1.10 Convento コンヴェント: 修道院
- 1.11 Monastero モナステーロ: 修道院
- 1.12 Abbazia アッバツィーア: 修道院
- 1.13 Badia バディーア: 修道院
- 2 知っておくと便利かもしれない建築用語集 日本語-イタリア語
教会/聖堂/大聖堂/礼拝堂…の呼び分け
ちょくちょく間違いもあったりするwikipediaではなく信頼のTreccaniより抜粋。
Chiesa キエーザ: 教会 聖堂
ギリシャ語の”ἐκκλησία“が語源で集まりや会合を意味します。キリスト教信者のコミュニティー、または、宗教行事を執り行う建物で信者がここに祈りの為に訪れる場。日本語だと教会、聖堂。
当サイトでは信者さん以外の使い方で、厳密な区分の必要ない一般的な言い方として”教会”を大きな括りとして使っていますが、”聖堂”の言い方が一般的になるのであればそのうち呼び方も変えます。ただ、”聖堂”を下の項の”Basilica”にあてるのであれば、こちらはどう読んでいいのやら、、という別問題も発生。
Duomoドゥオーモ: 大聖堂
ラテン語の”domus 家”が語源。神の家という意味で、街の一番重要な教会とされますが、必ずしも後のCattedraleとは一致しません。日本語では大聖堂と訳すことが多いようです。
混同されがちなのはドームdome、これは英語の丸屋根、丸天井。イタリア語でドームはクーポラcupolaになります。
Cattedrale カッテドラーレ: 大聖堂 司教座聖堂
司教区の主要となる教会で、”Cattedra 司教の椅子-司教座”のある場所。なので司教座聖堂。長い名前だし馴染みがあまりないからなのか、大聖堂とも言います。私も「は?」と言われそうな司教座聖堂とは言わずに大聖堂と言っています。英語だとカテドラルcathedral。
Basilica バジーリカ: 聖堂, 教会
ローマ時代の人々が集まり話し合う場としての公共建築。4世紀始めよりキリスト教徒の集まりの場としてローマ時代のバシーリカ様式(バジリカ様式)を使うようになったので、純粋に3〜5つの身廊と柱で構成される建築様式としてのバジリカという言葉もあります。つまりバジリカ様式の複数の身廊を持った大きめの教会のことを、バシーリカ。日本語では聖堂とも言うようですが私はひとくくりに”教会“と言っています。”聖堂内”とはたまに言っている気もします。
Collegiata コッレジャータ: 長い名前(以下)
上記のCattedraleカッテドラーレではない(司教座cattedraを持たない)capitolo collegiale-聖堂付き参事会、聖職者会の教会です。
日本語訳は不明ですが、小学館の伊和辞書によると『(司教座聖堂はないが)聖堂付き参事会に管理される教会』もうちょっと短い単語にまとめてもらいたいところです。
有名なところではエンポリのCollegiata di S.Andrea, サン・ジミニャーノのCollegiata di S.Maria Assunta、後者はサン・ジミニャーノ大聖堂のDuomo di S.Gimignanoとも呼ばれます。
Cappella カッペッラ: 礼拝堂, 小聖堂, 祭壇, チャペル
宗教建築の中の小さな独立した宗教的構造物。語源は聖マルティヌスのマント”Cappa”を保管していた場所より。
英語ではchapelチャペル。日本語は礼拝堂、小聖堂、など。
教会の真ん中にある一番大きな祭壇の事は”Cappella maggiore 主祭壇“と言います。左右の壁にある小さなやつはCappelle laterali、直訳すると”脇祭壇”か”側祭壇”、”横祭壇”とか謎用語になるので、とりあえず 助祭壇とでも言っています。翼廊にあるcappellaでも助祭壇だと使えるし…(正式名称があったら教えていただきたい!)
結婚式専用のウェディングチャペルは宗教施設ではありません。
Tabernacolo タベルナーコロ: タベルナーコロ(?)
道中にある(角のところかによくある)聖なる図像が描かれた壁龕。Cappellaカッペッラの括りも入るが、小さいのでCappellettaカッペッレッタとも言われます。”壁龕”は下にまとめた用語集にもある”nicchiaニッキア”という純粋に構造物としての言葉なので、この場合は使えない用語です。なので、とりあえずタベルナーコロ(仮)で呼んでおきます。
ペスト大流行の14世期に教会内で感染する事を恐れてタベルナーコロでミサを執り行っていたこともあります。
Santuario サントゥアーリオ: 至聖所
神秘的な現象に結びついた場所を差して使われる言葉。古代ユダヤ教においては聖なる神殿の中心となる場所”sancta sanctorum-聖なるものの中の聖なるもの”(エルサレム神殿の契約の箱が納めらた場所)。宗教上はこの言葉をどういった場所に使うかは厳密に定義されてはいないが、神秘的現象があった洞窟、高地、水源、に祈りの場が造られたところ、柱や石、などの場合もあり。日本語では広義に聖域、聖地。カトリックでは至聖所、聖人や聖母マリア、殉教者にまつわる場所、聖遺物や奇跡の図像などを教会内に持つ場所、それゆえ巡礼が行われます。
Oratorio オラトーリオ: 祈祷所, 小礼拝堂
初期のキリスト教時代から多く存在し、修道院や教会のそばで建物として独立した信心会やコミュニティーによる小規模のcappella-礼拝堂のこと。封建領主は城にプライベートのOratorioオラトーリオを持ち、16世期の反宗教革命時には広く普及、教会や修道院の上に多く建てられた。日本語では祈祷所、小礼拝堂。
Convento コンヴェント: 修道院
ラテン語の”conventus-us 集い”が語源。聖職者、托鉢修道会の修道士-frateが住うところ。
Monastero モナステーロ: 修道院
ラテン語の”monasterium <monaco 修道士>”が孤独に生きるところ”
上記二つが両方とも「修道院」になってしまう理由は、両方の修道院にいる人たちが、”monacoモーナコ”と”frateフラーテ”、単語が違うのに、日本語では両方とも「修道士」と訳されるからです。以下がそれぞれの意味です。括弧内はイタリア語での呼ばれ方で、日本語では両方使われます。
- monaco モーナコ: 修道士, モナコ
孤独に神に祈りを捧げて生きる人。abate-修道院長のもと、厳格な規則に則ってクラス人たち。
ベネディクト会(ベネデッット)、シトー会(チステルチェンセ)、カルトジオ会(チェルトジーノ)が代表的。
「孤独に」なので彼らの修道院monasteroは街から離れています。ただ、昔は田舎だったけれども現在街のど真ん中!という修道院もあります。 - frate フラーテ: 修道士, 托鉢修道士
ラテン語の”frater兄弟”が語源。中世後期に生まれた托鉢修道会の修道士のこと。
ドミニコ会(ドメニコ)、フランシスコ会(フランチェスコ)
彼らは民衆に神の教えと説くので、修道院conventoは街中かそれに近い場所にあります。
“フラーテ”を短く”フラ”とも言い、フラ・バルトロメオ、フラ(べアート)・アンジェリコなどの芸術家は修道士でもあるのが分かります。
Abbazia アッバツィーア: 修道院
また修道院です。これは厳密には、修道院などの建物も含む(主に)ベネティクト会の聖職者コミュニティーを指します。建物のみを指しても使います。
Badia バディーア: 修道院
いくつ修道院があるんだか?意味は上のアッバツィーアAbbaziaと同じで、修道士monacoのコミュニティーか彼らの建物郡を指します。しばしばAbbaziaもBadiaもその周辺の土地の名前として使われ、フィレンツェにはBadia a RipoliやBadia a Settimoなどの地名があります。
知っておくと便利かもしれない建築用語集 日本語-イタリア語
教会の建物を空から見下ろした時に見える形で区分けがあります。
- Pianta a Croce latina commissa:
T字型をしたラテン十字 - Pianta a Croce latina immessa:
よくある十字架の形*の上が出っ張ったラテン十字
(*よくある十字架の形-聖フランチェスコは”タウ”というT字型の十字架を持ちました。なので一概に十字架の形とも言えない…) - Pianta a Croce greca:
赤十字みたいな中央集中型のギリシャ十字
名称を知ってると便利な場面、例えば、
「建物の正面にあるメインの顔になるとこ!」と言うよりは、「ファサード」の方がすっきりしませんか?
以下に基本的な用語を日本語とイタリア語両方のwikipediaにリンクしました。写真やイラストがあるの分かりやすいです。
ただ日本語は若干意味がずれてる場合もありますし、リンクなしは該当する言葉がありません。なのでイタリア語もリンクした次第です。
- ファサード/facciata
- バラ窓/rosone
- 穴(オクルス)/oculo
- 身廊/navata
- 翼廊or袖廊/transetto
- 主祭壇/altare maggiore
- 祭壇/altare
- 後陣/abside
- クリプタ/cripta
- 柱頭/capitello
- (角柱or束ねられた)柱/pilastro
- (円)柱/colonna
- ヴォールト/volta
- 尖頭アーチ/arco a sesto acuto
- 半円アーチ/arco a tutto sesto
- 壁龕/nicchia
- 高窓/claristorio (”窓”のことではなく、身廊の上の高いところ)
しかし、日本語訳をする時に漢字が充てられたり英語で訳されたり、ラテン語風になったり、面倒ですよね。
それを言い出したら、ゼウスとユピテルとジョーヴェとジュピターとティンとティニアとが全部同じ神を指すととかもう見事に混乱させてくれるじゃないか…!
(ギリシャとローマとエトルリアと英語読み)
これの対応表もまとめようかしら…
ちなみにトップの写真はアッシジに行った時のものです。↓