ヴェネツィアのカーニヴァルが始まりましたね。
2018年のカーニヴァル期間は1月27日から2月13日です。
ニュースや写真で見る限り、相変わらずものすごい人混みです。
そんなヴェネツィアに、行ったのは、そのカーニヴァルの始まる4日前。
空いてます!
電車賃はitaloで片道9.90ユーロ、利用者が少ない時期なだけにセール価格。
下手にトスカーナ内で動くよりも、2時間程で到着してしまうヴェネツィアは安いし早いお手軽国内旅行です。
ただし、この時期は水位が上がってヴェネツィアの街に浸水する可能性もあるので、事前に予定を組む場合は賭けですよね。
運がいい事に、とってもいいお天気に恵まれて気持ちの良い海辺でした。
なんだか人混みがないと、ヴェネツィアにいる気がしません。
写真の風景はFondamenta Zattere al Ponte Longo、ジューデッカ島を眺める本島側。
気持ちよく色々と歩き回れて楽しかったのですが、一つ、気になる事が。それは、
アカデミア美術館が改装中カオス!
現在修復中の部屋などがあり、展示室が途中で行き止まりなったりで順路もクソもなにもない状態。
まずは、チケット売り場の笑顔の素敵なお兄さんに、
「カノーヴァの特別展があるから、あっちの扉から入れるよ。常設展は入り口近くの階段から上がってね。」
と、分かりやすい説明を受けてから進みました。
特別展示室
お兄さんに言われた通り、普段は締め切っているような扉を開けて中庭へ。中庭の端っこに表示にそって進むとそこからアントーニオ・カノーヴァなどの特別展。
カノーヴァ展を一通り観てまわったら、エレベーター前ホールの簡易ブックショップに出くわします。
その簡易ブックショップ脇には矢印マークの順路を示す看板があったので、それに従って上の階へ行くと既にそこは常設展ゾーンでした。
常設展示室
「あれ、お兄さん、この入り口の事は言ってなかったよね?まあいいか。」と、一通りぐるっと回る。
そのまま順路を進むと出口マークがあったので、矢印に従って階段を降りると、チケット売り場前のホール。最初の場所で終わり。
常設展らしき場所を通って来たけれども、なんかおかしい。展示数が少なすぎる。あれれ?
そこに置いてあったアカデミア美術館のカタログをパラパラしてみると、かなりの数の作品をすっ飛ばしている模様。
「うん、これは常設展にまだ行き着いていないに違いない!」
と、特別展への扉と反対側にあった、全く同じの扉を押し開けてみる。
すると、開ける直前にかすかに「No!」と静止する係の人の声。いや、でも時すでに遅し。。。
ピーピーピーピーピーピーピーピーピーピー!!!!
アラームを鳴らしてしまった、。
すみません、本当に。
特別展の扉だって案内がないところを押し開けてokだったのに、こっちはダメって、腑に落ちないわ。ロシアンルーレット???
いえいえ、もしかしたら、訪れる人には目に入りにくい迷彩な表示があったかも。
改めて、チケット売り場のお兄さんにもう一回、常設展はどこか聞いてみたら、下りてきた階段をまた上るようにと言われ、同じフロアを再挑戦。
ここで、初めて最初に渡された案内小冊子を開くと、見取り図発見。
もー、最初から見ようね、自分。
小冊子写真の左ページが地上階、右ページが上の階です。
常設展に再突入
階段を上ると小冊子右ページの右端、黄色い大きめの部屋に出ます。
その黄色い部屋の奥に、大きな板絵の展示があります。
大きな絵なだけに、その前で立ち止まる事があっても、まさかその後ろに回り込んでやろうなんて思う人は、板絵の状態が気になっちゃう職業病的な修復師さんくらいかと思いますが、そのまさかの裏に階段出現。
まさか、こんなところが順路とは、。矢印マークも奥まで行かないと見つけられないし。
ジョルジョーネ 「老女」
その裏から進むと、数々の名画がありまして、このおばあちゃんが奥から、
「よくここまで来れたね。」
とでも言ってくれている気にもなる、ジョルジョーネの作品、”老女”。
写真を撮ろうとすると、非常口を示す緑色の光が写り込んでしまうという絶好のポジションにあります。→現在は見やすい展示になってます。
これより奥の部屋は、現在改装中で行き止まりです。
なので、また来た道を引き返すと、道順的に矢印がなくても迷わないのはこの方向なのだな、、なんて思ったり。
要は改装工事で順路が逆になってるんですね。
そして、また小冊子をよくよく見ると、まだ行っていなかった部屋があるようなので、一度目に通った道を更に戻り、またまた表示のない細い廊下を右折すると、そこには大きな絵画作品が並ぶ廊下。
おお、これこれ!!!
ティツィアーノ 「ピエタ」
っていうか、反対側の壁に背をぴったり付けても、絵画全体の写真が撮れません。展示スペースに使える部屋が少なくなっちゃって、無理やり並べた感があります。
それにしても、鑑賞するには辛い。
鑑賞距離を2.5m(くらい)以下に制限されるってどうなのよ。
この作品、楽しみにしてたのにー!
ティツィアーノの晩年の作品なんですけれども、フィレンツェ、ウフィツィ美術館にも同じく晩年の作品”聖マルゲリータ”があって、個人的にこのあたりの作品が気になるんです。
これも気になってます→Punizione di Marsia チェコ共和国のKroměříž美術館にあります。って、そのKroměřížの読み方が分からないけど、いつか行きたいです。
ティントレット 「動物の創造」
この非常に辛い狭い廊下の後ろには、ティントレットの部屋があります。
入るとすぐに目に入るのは、こちら”動物の創造”(の部分)。
神が様々な動物を創っています。
ところで、ヴェネツィアではたくさんのティントレットの作品を鑑賞する事ができます。
その昔、学生時代に訪れた時はそのダイナミックな構図に「おおっ」と驚きながらも、何点か鑑賞した後は消化不良気味で、「もう結構です…」状態に陥りました。
そんな事を思い出しつつも、今回はスクオーラ・グランデ・ディ・サン・ロッコ(ティントレットの作品でいっぱいです。)も訪れての感想は、
「きっとこの人は宇宙人に違いない!」
(妄想)
なぜならば、あらゆるクラシックな宗教的テーマが、彼の手にかかるとあり得ない角度から見えてくるのですね。
例えば”キリストの洗礼”の場面を描いているのならば、通常はどこに洗礼者ヨハネがいて、どこにヨルダン川が流れていて、洗礼を受けるキリストがあって、、とすぐに意識しないでも分かるものが、ティントレットの手にかかると絵を凝視してやっと理解できるか、もしくは絵のタイトルを読まなくては分からない。
どういう発想で、これらの絵になったのか、それはこの人が宇宙人級の常人とは違う何かを見ていたのだろうか、、と思う訳です。
作品をカタログなどで図像としては知っていても、本物を自分の目で鑑賞すると全く違った作品に感じられるというのもありますし、面白いです。
ティントレット 「 聖マルコの遺体の窃盗」
もともとスクオーラ・グランデ・ディ・サン・マルコにあった作品で、ミラノのブレラ美術館に現在所蔵されている作品と、もう一点同じアカデミア美術館所蔵のものと合わせて3点の連作です。
ところで、作品の絵の前にいる監視のジジイが邪魔で気になりますよね?!
絵の登場人物が抜け出して来たような風貌、ポーズ、色合いもぴったりだから、わざとここにいてくださるのかしら。
この方は待っていてもどいてくれなかったので、写真に入ってしまった図↑。
作品のキャプションを覗いても全く動こうとしないので、
「作品を鑑賞したいので、ちょっとどいてもらえますか??」
と、言ったら、やっと仰々しく「どうぞ。」ってどいてくれました。
自分の仕事が何なのか、よく分かっているようですね。
→”美術館内での時間潰し“
そんなこんなで、絵の全景。
特別展、Canova, Hayez,Cicognara. L’ultima gloria di Venezia. -カノーヴァ、アイエツ、チコニャーラ。ヴェネツィアの最後の栄華-
改めまして、特別展で鑑賞できて個人的にうれしかったものの一つをご紹介します。
こちら、
アントーニオ・カノーヴァ 「ティツィアーノの霊廟のモデル」
残念ながらこのカノーヴァのモデルによるティツィアーノの霊廟は実現しませんでしたが、この霊廟案を元にカノーヴァ自身の霊廟が弟子たちによって実現されました。
それが、サンタ・マリア・デイ・フラーリ聖堂 Basilica di Santa Maria dei Frariにて現在も見る事ができます。↓
フリーメイソンのメンバーだったのもあり、シンボリックに三角形。
三角形は他に”永遠”も意味します。
カノーヴァのモデル制作は1790年。後のナポレオンのエジプト遠征ではエジプト趣味は流行になります。
ローマのピラミデ・チェスティアと呼ばれる紀元前1世紀の霊廟や、ギージ礼拝堂のラッファエッロ原案、ベルニーニ制作のピラミッド型の霊廟も影響を与えたとも。
近くから鑑賞すると、こんな。
霊廟と言っても、ここにあるのは彼の心臓のみで、亡き骸は出身地であるポッサーニョのテンピオ・カノヴィアーノ(カノーヴァ設計)にあります。
右手はヴェネツィアのアカデミアに。
亡骸を分けることは聖人と同じように扱うことで、神格化がプロモートされました。
ティツィアーノの霊廟の方は、現在こちらになっています。
カノーヴァの弟子ルイージ・ザンドメネーギ(カノーヴァの霊廟製作者の一人)とその息子ピエトロが手掛けました。
この霊廟をよく見ると、奥のレリーフ、見覚えのある図像では?
そう、これはこのサンタ・マリア・デイ・フラーリ聖堂の主祭壇を飾る、ティツィアーノの代表作、聖母被昇天。(←リンクから絵画のみのページが見れます)
サンタ・マリア・デイ・フラーリ聖堂には他にもお宝ザクザク的作品群があり、素敵、。
でもですね、もともとティツィアーノが望んだのは、自らのお墓には先程も登場したこの作品↓を据えるという事。
未完のままに亡くなり、パルマ・イル・ジョーヴァネによって仕上げられましたが、
なんだか、寂しい気分になります。
本人の遺志が尊重されなかったのは、ミケランジェロも然り。
まだあった、展示室
で、この特別展なのですが、絶対見逃している人がいるのではないかという場所にも展示室があります。
それは、チケット売り場の左奥。
そんな事は一言も案内されなかったのだけれども、地図を見ると何やらありそうだ、と進んでみたら、展示室発見。
一番奥まで行くとまだ工事中で行き止まりなので、やっぱりチケット売り場の左奥から行くしか手はなさそうです。
カノーヴァ関連の作品もありますが、気に入ったのはこれ。
ジャンバッティスタ・ティエーポロ
この大きな丸い作品は天井近くの高い場所にちょっと下に傾けて壁にかかっているので鑑賞もしやすいです。
どうやらこの辺りの部屋は改装工事が終わった区画のようで、展示方法が美しい。タッチパネルのインタラクティヴモニターもあります。
・参考・
ジャンドメーニコ・ティエーポロのもう一つの代表作が観れるのがヴィチェンツァ。@ヴィッラ・ヴァルマラーナ・アイ・ナーニ
終わりに
以前アカデミア美術館に行った時には、ジョルジョーネの”テンペスタ“に心打たれすぎて、他の作品の記憶を喪失していました。
それが今回久しぶりに訪問して、他の作品を落ち着いて鑑賞する事ができてよかったな、と思います。
美術館の改装されていない区画も冷静に見ると、本当に古い!本当に改装が必要だったんですね。
改装後にまた行きたいです。