ヴァザーリ『画家・彫刻家・建築家列伝』 MP3 : ピエロ・ディ・コジモ

ヴァザーリ 画家・彫刻家・建築家列伝

ヴァザーリ『画家・彫刻家・建築家列伝』

ウフィツィ美術館の子供達に向けたプロジェクトです。大人にも面白い語りになっていて、無料でMP3ファイルをダウンロードできます。

 File audio i Vasarini (現在非公開!)

 ウフィツィ美術館の建物は、芸術家・建築家であるジョルジョ・ヴァザーリの設計によるものですが、彼は美術史上初の美術史を記した人でもあります。

その本のタイトルは”Le vite de’ più eccellenti pittori, scultori, e architettori” 。
直訳すると「もっとも素晴らしい画家、彫刻家、建築家たちの伝記」ですが、多分これだと格好悪いからなのか、日本語では『画家・彫刻家・建築家列伝』と呼ばれています。
オリジナルタイトルもやたら長いのでLe vite (レ・ヴィーテ)と普段は言います。

この本は、とても有名。
なぜかと言うと、イタリアの美術!と言えば必ず名前が出て来るような芸術家をほぼ全員網羅しているから。
1550年版と1568年版とあって、それ以降のバロック時代の芸術家の名前はもちろん出てきませんが、チマブーエから始まって、ルネサンス、マニエリスムと有名どころがずらっと並びます。
ただしとっても重要な本として有名なのですが、間違いや作り話がある事でも有名な本です。要注意。

著作権はとっくに切れているので、探せば無料で読めます。
これとか、 De Bibliotheca
インターネットアーカイブ、 INTERNET ARCHIVE
こちらはPDFファイルになってます。 https://resources.warburg.sas.ac.uk/pdf/cnh1250b2204682.pdf

で、読むのには若干いかつい文面を、もっと子供達にも親しんでもらおうというのが今回のプロジェクト。
音声でとても面白く語ってくれます。
芸術家の逸話なんか楽しく聞けます。

イタリア語版しかないので、いつものごとくざっくりと訳します。


–Piero di Cosimo ピエロ・ディ・コジモ–

彼のことを”奇人”とひとは呼んでいました。

ピエーロは「なんで皆は食べることにそんなお金と時間をかけるのか分からない。」と言います。

「私の大鍋を見るがいい、絵を描くのに必要な糊を作るのに煮ているこの大鍋に50、60個の卵を入れるんだ。一緒に煮ればゆで卵の出来上がりだ。そして絵を描きに行く。壁にそのゆで卵を(籠か何かに入れて)ぶら下げるんだ。絵を描きながらたまに手をゆで卵に伸ばして、ささっと殻を剥く、2分と時間をかけずに苦労もせずに昼食の出来上がりさ。」

彼の家に行く人は、少し居心地が悪かった。家の中の床はゴミがたまり、天井からは沢山の蜘蛛の巣がかかっており、壁は湿気ていた。

ピエーロは「何を見てるんだい?」と言う。

「ゴミ?君たちはこのゴミの端っこに生えてくるカビの美しさを知らないのかい?埃?見てごらん、この美しいグラデーション、この優しいぼかし具合を。しかもその上を指でなぞれば、名前だって書ける。私の畑?ああ、怖がらないでいいから見に来てごらん。雑草が沢山なんてことはない。私からしてみれば、市場で売っている果物は偽物に見えて仕方がない、あの砂糖漬け、。本当の自然の恵とはこの事を言うのだ。私はここを耕した事はない、夕方に水をやるなんて事もない。太陽と、雨があるではないか、こうやって自然に任せる事によって、畑は自ら作物を生み出す事を学ぶのだ。」

「壁のカビか、これは私が望んでこうしているのだ。漆喰や色を塗り直すなんてとんでもない。これが素晴らしいのだ。天然痘の跡や、素晴らしい地図のようではないか、。ああ、いい言葉が見つかった。”存在しないものを私に考えさせる”これだ。これらの染みの形がその時によって、思い起こさせるものが違ってくる。例えば、、私が怖いという感情を持っている時は、染みが悪魔や怪獣に見えて来る。笑いたい時はカリカチュアに見えて来る。お腹が空いて入れば食べ物に、旅をしたい時は塔や馬や城に見えて来る!、、こうやって壁を見て時を過ごすのが好きなんだ、誰にも邪魔をされず、自由で幸せで、自分を風のように感じるよ。他人には邪魔をされるけど、壁には邪魔をされないからね。ただハエだけは大嫌いだ、恐ろしい。ミルクの入ったコップに飛び込んで来て・・・」

「・・・・私は自分のベッドでは死にたくない。死ぬのには死刑が理想だ。考えてもみてほしい。死ぬ時に付き添ってくれる人がいるんだよ。女たちは泣き、勇気をだして!とエールとキスを送ってくれる。死に場所は広場の中、まるで劇場だ。・・・」

「変わった考えをしているだって?個性的?そんな事はない、これはうちの家系でね。先祖もこういう考えを持っていた。例えば、風が吹いたり、雨が降ったり、雪が降ったり、、そんな時は幸せだ。でもね、嵐は一番嫌いだ。雷光と雷の時どうするか知ってるかい?マントに身をぴったりと包んで、タンスの中に隠れるんだ!・・」

「・・ひとは私の事を変わり者だと言うけれども、、確信してるよ、こんなに思慮深く賢い人間は世界にまたといないと。」


 

小学校高学年の時に突如始まったお昼の放送、給食の時間に、
「♪でーてこい、でてこいでてこい、ドンドコドン。お話出てこいお話出てこい、ドンドコドンドコ出てこいよ♪」
というオープニングソングと共に始まるお話を思い出しました。笑