ローマのMausoleo di Santa Costanza 聖コスタンツァの霊廟、美術史では必ず出て来るローマ帝国(西ローマ帝国)も終焉に近づこうとする紀元4世紀の建物です。
ローマテルミニ駅からだと、観光客の集中するコロッセオとは反対側にあります。
キリスト教公認は、コンスタンティヌス帝による313年のミラノ勅令。皇帝は更に政治的、戦略的にキリスト教を保護します。コスタンツァはそのコスタンティヌス帝の娘です。
もともと、313年以前もキリスト教が常に迫害されていた訳ではなく、ローマ法により宗教の自由が認められており、地下にあるカタコンベも彼らの墓として、尊重されていました。キリスト教の迫害時代にカタコンベで隠れてミサをしていた訳ではありません。ミサは教会としての箱物がない場合もドムスと呼ばれていたちょっと広めの住居で行われていました。
そんなカタコンベ、フィレンツェには今の所ありません。もしかして将来発掘されるかもしれませんが、カタコンベが作られていたその時代、Florentia フロレンツィアと呼ばれた小さな町でしたので、そこまで墓の需要はなかったのかもしれません。
可能性があるとすれば、S.Felicitaサンタ・フェリーチタ教会の地下。発掘研究もされていて、様々な蛮族に脅かされ、戦い、亡くなったキリスト教の兵士たちの碑が見つかっています。分かりにくいところにありますが、一部は現在でも見る事ができます。
普段身近にある存在ではないのでカタコンベを見るのは非常に新鮮です。見学ツアーを申し込みました。
観光シーズンを全く外した時期の平日だったので、時間になっても見学者は私の他にはおらず、完全なるプライベートツアーになっていましました。ローマの公認ガイドのヴァレンティーナさんが案内してくれました。話の流れで私もガイドだと言うと、じゃ、と、簡単な説明は抜きに色々詳しい事を教えてくださいました。姉御肌のいい人です。
日曜日は日本の方が案内しているそうです。ツアー参加者が日本人ばかりであれば、もしかしたら日本語ツアーも可能かも分かりません。事前に問い合わせてみてください。
で、写真でご紹介したかったのですが、そのカタコンベゾーンのみバチカン所有。写真は不可です。隠し撮りしたところでそれがバレたらまずいです。バチカンに怒られたら、勝ち目はまずありません。必負。無理です。
絶対敵には回したくない団体の一つ。なので、おとなしく決まりに従いましょう。
聖アンニェーゼのカタコンベ Catacombe di S.Angese
頑丈な扉を鍵を開けてもらい、ヴァレンティーナさんに続きます。
まず気付くのは、空気。ひやっと湿っぽかったです。地下のワイナリーと同じ感じ。1メートルにも満たない幅の狭い道が続き、その両側には遺体を収める穴。当時の人の体格、特にラテン人は小さめだったので、こんなので入るのかな?というくらい小さいです。子供の遺体を収める穴もありました。
現在はほぼ穴だけ並んでいますが、穴を塞いでいた石が残っているところもあります。一角では骨をそのまま残して見れるようになっているところもあります。
礼拝堂のような空間もありますが、前述した通り、ミサは行われていませんでした。上に小さなランプを置くところがあったりします。その小さなオイルランプは、通り道の角にも置いて使っていたそうです。角に小さな窪みが付いていました。
実際見学したのは、入り口付近のみでしたが、地下の全体の地図を見せてもらうと、現在の道路の下もずっと続いていて、地上の敷地よりもかなり広範囲。今では塞がれてしまいましたが、聖コスタンツァの霊廟までも続いていたそうです。
それにしても、同じような通路が右へ左へと、、元の通路に戻ったのにも気づきませんでした。
「ここに一人で、電気がなくて、扉が閉まってて、出口が分からなくて迷ってしまったら?」という素敵な悪夢を妄想できる(?)いい経験です。
ローマに行ったら、カタコンベ巡りというのもいいかもしれません。
コスタンツァの聖堂 Basilica Costantina
ここまで説明していて今更ですが、このカタコンベは、Le catacombe di S.Agnese 聖アンニェーゼのカタコンベという名で呼ばれます。もともとが、殉教した聖アンニェーゼをカタコンベに埋葬したところの信仰で、まず最初に現在は遺跡としてわずかに残る、Basilica costantiana コスタンツァの聖堂と呼ばれる建物が建てられました。
そのコスタンツァの聖堂跡が、これ。
敷地から出て、その後ろから見ると高低差がかなりある事が分かります。↑聖堂の後陣部分です。
この聖堂は、現在の教会から見ると、特殊な使われ方をしていました。死者の為の儀式がメインでした。葬式というか。エトルリア文化でも、ローマ文化でも一般的であった、泣き女も活躍していたそうです。興味深いです。
オノーリオ教皇の時代になって、新しく現在の聖アンニェーゼ教会(同じ敷地内にある別の建物)が建てられたのを機に打ち捨てられてゆきますが、それまでは教皇がバチカンに居る事ができない時にここへ逃げて来たり、と重要な場所でした。
聖アンニェーゼ教会 Basilica di S.Agnese fuori le mura
こちらが新しく(といっても7世紀半ば)建てられた聖アンニェーゼ教会の内部。
小さいながらもとても美しい。
聖コスタンツァの霊廟 Mausoleo di S.Costanza
上の方に載せた聖コスタンツァ霊廟の外観写真、中に入るとこのようになっています。円形です。
この、ドーナッツの内側のような形と言っていいのか、天井がぐるっと一周モザイクで覆われています。初期キリスト教美術を代表する作品のひとつで4世紀のもの。
17世紀までは真ん中の円形の天井クーポラ部分にもモザイクが残っていたという記録があります。
壁龕のモザイクには、髭なしのキリストがパオロとピエトロに神の法を渡すシーンが表現されています。
ちなみに、この場所にあった聖コスタンツァの棺は現在バチカン美術館で見ることができます。ポルフィドというエジプトのファラオやローマ皇帝たちが好んで使った赤っぽい色の石で造られています。
インフォメーション
ローマにある他の多くの観光スポットからは少し離れているのであまり目立たないのですが、足を伸ばす価値のある場所です。
カタコンベ見学はガイドツアーに参加する必要があります。個別には入れません。下記のオフィシャルサイトより予約をしてください。
また、時間の変更等ある可能性もありますので、訪れる際はご自身でご確認ください。
–場所
Via Nomentana, 349
00162 – Roma (RM)
–コスタンツァの霊廟
毎日 9:00-12:00 / 15:00-18:00
–聖アンニェーゼ教会
月〜土 9:00-12:00 / 15:00-19:00
日 15:00-19:00
–カタコンベ(見学ツアー要予約)
9:00-12:00 / 15:00-17:00
休み: 日曜朝、宗教祭日の朝、クリスマスと復活祭の日、8月15日
–オフィシャルサイト
PARROCCHIA DI SANT’AGNESE FUORI LE MURA
ちなみに、コッペデ地区もこの近くですので両方合わせて見学するもおすすめです。