ついに開けてしまった、気づかぬふりをしていたブラックボックス、
パラティーナ美術館で撮った写真のアルバム「Galleria Palatina」の項目。
最近は多くの美術館で写真撮影可能になっていますよね。ピッティ宮殿もフラッシュなしでの写真が取り放題。
もともと写真を撮る事を避けていたので、過去の旅行写真なんかは友達に撮ってもらったもの以外はないのですが、美術作品は例えば半年後とかに確認したくなっても、記憶だけでは頼りにならないな、と、ここ数年写真を撮るようになりました。
撮ったら、その後の管理が大切。デジタルメモリーは飛んでしまったらおしまい。そして、仕分けも重要。
特に、パラティーナ美術館の仕分けは重要です。
「ピッティ宮殿」のファイルの中に、アルバムを作って仕分けはしていました。「ボーボリ庭園」「近代美術館」「衣装・ファッション美術館」「陶器美術館」「大公たちの宝物館」「特別展示」、、そして、「パラティーナ美術館」。ここに取り込んだ後の写真を全て保存。でも、何回も行くので、ちょこちょこ気になる作品を撮ったりする度に、「パラティーナ美術館」のアルバムに放り込む。、、を繰り返すと、どういう事になるのか、
それは、無秩序。
もう、何が何だかわからない、どこの部屋ににあった作品か分からなくなりそうなマイナー作品たち。
だって、こんな部屋がずっと続くんです。
ここはフィリッポ・リッピの有名な作品、トンド・バルトリーニ(写真の一番大きな丸い作品)のあるプロメテウスの間。
美術館全体で展示作品数はおよそ800点。
重要な作品や、ほどほどに知られた作品、興味ある分野の作品ならば把握していますが、壁の上の方にかかった(例-ヴェネト州出身の中堅画家が描いたマルケ州の中堅貴族の肖像画-どっちの名前も聞いた事ない) とかは、さすがにちゃんと鑑賞した事もないです。
ここパラティーナ美術館はガイドとしては鬼門でもあります。お客様に、「あの作品は?」と聞かれた時に指さされた作品が、そういったタイプのマイナーな絵であると、「分かりません。」としか言いようがありません。絵のスタイルから大体の年代とどこの地方の画家か、といった大まかな説明ならできますが。そもそも全部説明できる人もいないし、ここでのガイドはしない人も多いです。
でも、可能な限りの把握をしたいのと、何よりここがとても好きなのでプライベートでも行き、ついに作品の写真コレクションが約1000枚越えしていまいました。
とにかくまずは、部屋ごとに分ける事にしました。
しかし早速、この一枚が迷子。
容量の小さい携帯で撮っていたので、荒い画像です。
うーん、このネオクラシック様式の部屋と言えば、、、と、見当をつけて他の写真を探すと、
あった。
同じ様式!
この写真も迷子だったけれども、サルネームサイズから普通の大きさに拡大すると身元が分かりました。中心の丸い絵のテーマが馬車に乗ったアポッロ(アポロン)。同じテーマのアポロンの作品が、同じ部屋に。
このテーブルの天板がコンメッソフィオレンティーノ(フィレンツェモザイク)で作られていて、同じくアポロンの馬車がモチーフ。このテーブルに呼応して天井画を描いたのがジュゼッペ・カスタニョーリ。なので、この部屋は”カスタニョーリの間”と呼ばれています。肝心の天板の模様が見える写真はありませんでした。。このテーブルの足部分はドゥプレ作で、それをメインに撮った写真でした。
これで迷子の写真2枚が整理完了。
さて、このカスタニョーリの間右手に扉があります。初めて行く人は見落としてしまうかもしれない目立たない扉ですが、そこに入ります。すると、こんな部屋が出現。
ヴォルテッラーノの区画と呼ばれる一連の部屋の一つ目です。
こうやって全体の写真があると分かりやすいですね。真ん中にあるのはミケランジェロがサン・マルコの庭(現存せず)で偉大なるロレンツォに見出されて特別に給料までつけてもらって修行していた頃の姿を後にエミリオ・ゾッキが制作したもの。
彼のいとこ、チェーザレ・ゾッキも同じテーマのミケランジェロ像を制作しています。
それが、こちら↓(一部・若いミケランジェロが制作中のマスク)ブオナッローティ(ミケランジェロ)の家にあります。
チェーザレ・ゾッキの作品の方は立ち姿です。エミリオの方が年長で共に1800年代から1900年代初頭にかけて活躍しました。チェーザレはフィレンツェ大聖堂のファサードのレリーフなども制作しています。名前は有名でなくても、毎日沢山の人が目にしています。
次の部屋のに入って振り向くと、頭上に現れるのが、ルーベンスのキリスト復活。
写真の下にSALA DELLE BELLE ARTIという札があります。これは、通路になってる扉の上の表示で部屋の名前です。たまに貸し出されていて違う作品が展示している事もありますが、美術館に訪れる際はせっかくなので見落とさずに鑑賞していってください。
さらに奥に進むと、こちらはエルコレ(ヘラクレス)の間。
ピエトロ・ベンヴェヌーティの作品が壁4面と天井にあります。ヘラクレスがテーマの連作。
この写真では右の白い扉はしまっていますけれども、なんと最近はよく開いているんです!
開かずの間だったのに!!
開いていると、直行して観に行くのがこの作品。
フランチェスコ・フリーニの”詩と絵画のアレゴリー”右の女性が詩を、左の女性が絵画を表します。
一時期PCの壁紙にしてた好きな作品なのですが、本物が非公開だったんです。でも今年の春頃から、行く度に開いています。非常に嬉しい!
フランチェスコ・フリーニは、1600年代のフィレンツェバロックを代表する画家の一人です。生臭坊主ではなく本気の僧侶、なのに描く女性がとても官能的。
同じ部屋にもう一点、フリーニ。アダムとイブが罪の後に恥を感じて身体を隠しています。
バロック絵画にありがちな、深い青とか暗色系の色が写真では全く分からない状態なので、是非本物を観ていただきたい作品の一つ。
光と影の明度の差がありすぎて、どうしても写真だと色合いを表現しきれないんですね、。実物は深い碧い神秘的な美しい色が画面を支配します。ナポリ、カポディモンテ美術館でやっと見れた本物のグイドレーニの作品を観た感動もやっぱり大きかったです。
それが、この”アタランタとヒッポメネス”
残念ながら、写真になると魅力が80パーセント減。
同じ部屋にもうひとつ、気になる作品を最近になって見つけました。
それが、これ。ジョヴァンニ・ビリヴェルトの”ルッジェーロから身を隠すアンジェリカ”
この作品の大きいヴァージョンが、ウフィツィ美術館にもあります。
それが、これ。
どれもこれも、自分の記録用写真として撮っているのでいい画質ではなく申し訳ありません、。
下の絵は、またこれも開かずの間になっているウフィツィ美術館の最後の黄色の部屋(カラヴァッジョの後、右奥に部屋)にある作品です。展示方法を変えている気配があるので、今後はどこかへ移動するかもしれません。
共にビリヴェルトの作品。大きさがパラティーナ美術館のものは幅で50cmくらい、ウフィツィ美術館のは1,5mくらい。あと衣が腰にかかっているかどうかの違いがあります。
今、この二つの作品について調べている最中ですが、手元にもオンラインでも資料が見つかりません。分かったのは、大きな作品の前年に小さな作品が描かれたという事。(こちらも、全部の履歴を調べられた訳ではないです。)それとキャプションの簡単な説明のみです。
ウフィツィのニオべの間を入って右の壁にある、大きなスステルマンスの絵画の縮小版もここパラティーナ美術館にあります。先に商品見本みたいな形で注文主(大公)に見せてから大きな作品に移行した、という経緯がありますので、この作品ももしかしたら?資料が手に入り次第よく確認したいと思います。
そんなこんなで、あっちこっちにごちゃごちゃになっていた作品写真が、どの部屋にあったかな、なんて考えながら整理していたら、頭のなかで部屋を行ったり来たり、。自分は記憶が視覚的にできているので、本当にあっちこっちへ動き回っているような気分になり、脳内ヴァーチャルツアー。3時間のヴァーチャルツアーはとても疲れましたが、ようやくすっきり!
すっきりしたけれども、この子はまだ迷子中。宮殿正面側の部屋のどこかにあったはず。多分。
ここでご紹介した作品は、マイナーな分野です。↓ツアーではラッファエッロなどの有名作品を中心に回ります。