壁の中の隠されたフレスコ画 サンタ・マリア・ノヴェッラ教会

サンタ・マリア・ノヴェッラ教会 出て来たフレスコ画

Facebook Pageでお知らせしていました、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会での新発見のフレスコ画の初お披露目、今まで逃していたので、ちゃんと予約を取って先週の土曜日の見学に参加してきました。

まず、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会について

この教会にはそれはもう沢山の美術品があるのですが、まず、アルベルティ設計のルネサンス様式ファサードが有名です。正面ですし、一番目立つところですね。

現在の建物はフィレンツェで初のゴシック様式の教会で、1279年からの建築です。
それから年代を追っていろいろ変化があるわけですが、その中でも一番大きな変化は1500年代中頃のトレントの公会議による反宗教改革の決定にしたがった改築です。
トラメッゾ、もしくはイコノスタシスと呼ばれる教会の身廊を大きく二つに分けていた壁が取り払われました。聖職者と信者は同じ教会内でも壁で隔たれていたものをなくす為です。
この教会に限らず、どこの教会にも存在したトラメッゾをことごとく破壊してしまい、フィレンツェ周辺で唯一残っているのは、Badia a Passignano バディーア・ア・パッシンニャーノに木製のものを見ることができます。

ジョルジョ・ヴァザーリの作品保存

サンタ・マリア・ノヴェッラ教会の改築をコジモ一世の命により実行したのがジョルジョ・ヴァザーリ。この人は、自分より前の時代の人の作品(彼の考えによるもので、チマブーエ以降ですが)を評価し、なるべく保存する事を考えます。

ヴェッキオ宮殿の500人の間の壁にもともと描かれていたレオナルド・ダ・ヴィンチのアンギアーリの戦いの図も、このヴァザーリによって保存されたのがまだ壁の裏側にあるのではないかと考えられています。
レオナルドの絵を破壊しないように、壁をもう一枚造って現在の装飾が施されています。
ちょっと前に壁に3つ穴を開けて調査が行われたのも、記憶に新しい話です。

そして、サンタ・マリア・ノヴェッラ教会においても、マザッチョによる三位一体図を新しく付け加えた助祭壇の後ろに破壊せずに保存していた為に、現在でもそのその絵を観賞する事ができます。

マザッチョ 三位一体 サンタ・マリア・ノヴェッラ教会

それに加えての最近の発見が、その他の助祭壇の後ろからもフレスコ画が出て来たことです。
その存在は文献では知られていて、一部は1800年代にも発見されていました。
それが今、実際に私たちが見ることができるようなりました。

それが、こちら。

壁の中からフレスコ画出現!

ブルーノ 裏からでてきた

こんな感じで、蝶番がついて可動式になった通常の祭壇画の裏から、フレスコ画が出現します。
普段は閉まっていますが、この見学ツアーでは係りの人が開けてくれます。

ブルーノ・ディ・ジョヴァンニ Bruno di Giovanni

サンタ・マリア・ノヴェッラ ブルーノ 

Bruno di Giovanni ブルーノ・ディ・ジョヴァンニというフィレンツェの芸術家の作品。1330年頃。

左から、聖バルバラ、アレッサンドリアの聖カテリーナ、聖ジョルジョ。
この一番右の聖ジョルジョなんですが、一瞬贅沢な服装から聖ジュリアーノ(元貴族の聖人)かなと思ってしまいます。
あまりない表現ですが、これもありで聖ジョルジョなんだそうです。

よく知られた聖ジョルジョと言えば↓

聖ジョルジョ バルジェッロ

石膏デッサンには欠かせない、彼。
ドナテッロの作品で、バルジェッロ美術館 Museo Nazionale del Bargelloにいらっしゃいます。聖ジョルジョと言えばこの作品をを条件反射で思い出すのは美術系出身者の性ですね。

話を戻して、先程のブルーノのフレスコ画。よく見ると、それぞれの人物の後ろに誰かいます。うっすらと頭の上に見える色の薄い部分です。
背後霊とかに祟られている訳ではありませんよ、みなさん聖人ですし。
面白い事に、全く同じ聖人を一度描いた後に同じ芸術家が十年経ってから書き直したものだそうです。

同じくそのブルーノの作品がもう一つあります。↓

サンタ・マリア・ノヴェッラ ブルーノ 戦いの図

現在は傷みなどもありこの姿ですが、もともとは本物の金属のプレートを蹄や甲冑に貼り付けてあったりして、かなり印象の違うものだったはずです。キリスト教徒同士の戦いになってしまったのを止めるローマ軍の騎士の姿が左にあります。

フランチェスコ・ボッティチーニ Francesco Botticini

ボッティチーニ フレスコ画

こちらは、フランチェスコ・ボッティチーニ。
エンポリの聖アンドレア絵画館に彼の作品が多くありまして、、似ている名前だけどボッティチェッリではありません、ボッティチーニです。
彼のフレスコ画は今まで存在しないかと思われていたのですが、ここにありました!という結構重要な発見です。

左から、聖ロッコ、大天使ラッファエーレとトビオーロ、聖アゴスティーノ。

足に傷があって、巡礼の杖を持つのが聖ロッコで分かりやすいのです。
しかし不思議な事に、よく見ると頭に聖ステファノばりの石を乗っけています。(分かりにくい写真で申し訳ないです)
背景に岩があるので混ざってしまっているという状況ではなく、金箔の後輪の中にくっきりとその石が描かれているので、明らかに意図のある描き方です。研究中だそうです。

この作品には金箔をふんだんに使っていたのが今は大部分が取れてしまっています。でも、色合いがAlesso Baldovinettiにちょっと感じが似ていたり、個人的には好きです。

もう既にローカルすぎる話題に乗せて、更にローカルなネタを突っ込みますと、上のフレスコ画の中の額縁みたいな枠装飾は現在サンタ・トリニタ教会にあるルーカ・デッラ・ロッビアによるベノッツォ・フェデリーギの墓の枠装飾に似ています。
もともとはサン・パンクラツィオ教会というサンタ・マリア・ノヴェッラ教会の近くの教会にあったもので、影響を受けたのは間違いないとの事。

影響を受けたというサンタ・トリニタ教会の墓はこれです。↓

サンタ・トリニタ教会  フェデリーギ 墓

若干「そうかな?」っていう気もしますが、個人的に好きな墓なのでOkと言ってしまいましょう。
デッラ・ロッビアの作品はかなり人によって好き嫌いがはっきりする事が多いですが、これは近くで見ると素直にいいですよ。(このタイルうちに欲しいなー)

ステーファノ・フィオレンティーノ Stefano di Ricco detto Stefano fiorentino

聖トマス サンタ・マリア・ノヴェッラ教会

1300年代半ばに描かれたステーファノ・フィオレンティーノの作品。
これは一足早く、1800年代に発見されて壁から剥がされていたものです。見学ツアーでなくとも鑑賞可能。

非常に興味深いのは、中の壁龕から右足を一歩踏み出し、右手も外に出ているというルネサンス的空間表現。時代を先取りしてます。
マザッチョが三位一体で遠近法を使い、聖なる空間を奥に、俗世を手前に描き分けたことに確実に影響を与えている作品です。絵の中での空間イリュージョン。

ナルド・ディ・チョーネ Nardo di Cione

聖ベネデット

同じく1800年代に発見された部分で、製作されたのは1300年代半ば。
ナルド・ディ・チョーネによる聖ベネデット(ベネディクト)です。

その裾絵(下の小さな絵)の部分に注目が集まっています。

聖ベネデットにまつわるお話が描かれているのですが、話の順番的に右から左になってしまうのです。通常は文字を書く方向と同じで、左から右。

もともと教会内部全体にはこの作品も含めたフレスコ画による物語がずらーっと並んでいたはずです。
左身廊にあったこの作品は物語の最初の方なのにも関わらず、順番が逆なのだとしたら物語の最後の方になると、、、?
なぜ、この並びなのか、他にどんな作品があったのか、など、まだ漆喰に隠れて分かっていないところも多いそうです。調べればいいじゃないかと思ってしまいますが、現実は許可が下りるかどうか、また現在の姿を一度破壊してしまいかねない作業、いろいろ問題があって、すぐには進みません。将来的に新しい事が分かればうれしいですよね。

もっと多くの鍵が発見されてゆけば、かつての姿の再現も可能になるでしょう。
今とかなり違った教会の内部の様、ヴァザーリの助祭壇は一つもなくて、トラメッゾがあって、壁は一面フレスコ画で埋め尽くされ、この裾絵が帯のように教会内を巡る、、、等々。

このお披露目ですが、今のところ、入館無料の第一日曜日とその2日前の金土、一月に3日間に限られます。教会主催の見学ツアーは英語とイタリア語で開催されています。
→なくなってしまいました。最新情報は教会のオフィシャルサイトをご参照ください。