フィレンツェ方言 – イッケ、シナモン水、ダレッタ!、バッ、、、スィーエッ!

シナモン水 フィレンツェ方言

たまに口語フィレンツェ方言を文字化しているのを、snsとか、フィレンツェニュースネタとか、フィレンツェ人の多いグループチャットなどで見る事があります。

一瞬、「はて?」と思いつつ、発音すると、納得。

その一例がこちら。

 

“Oh ma icchè tu fai?”

“Unn’è vero!”

“Un c’è niente da fare”

“Bah!”

“Sìeh!”

 

あぁそうね、と思ったあなたは、フィレンツェ語をイタリア語だと思っちゃっているお仲間。

アルファベットが並んでいるな、と思ったあなたは、謎な文化圏に片足を突っ込んでいない無事な人。(違う場所に片足や両足を突っ込んでるかもしれないけど!)

普通に読んで疑問を持たないあなたは、Fiorentino/a DOC 。(血統書付きフィレンツェ人)

 

上の例を普通のイタリア語に書き直すと、こんな感じ。

“Oh ma che tu fai?” 「オゥ何してんだよ?」

“Non è vero!”   「違うって!本当じゃないよ。」

“Non c’è niente da fare” 「どーしよもないね。」

“他になんて言えばいいか知りません”   「そうかもね。」(返事の替わりに)

“Sì  、、っていうと落ち着かないな” 「あ、そーお?!」(時と場合により意味が変化)

 

 

ハヒフヘホのコカ・コーラ

他によく言われるのは、「ハヒフヘホ」の発音。

通常イタリア語にはhの付く言葉はないので、外来語のHotelだと「おてーる」と言ったりします。

昔、それを日本の友達に話したら、「じゃ、浜崎あゆみは、尼崎Amazakiあゆみになるんだね!」と演歌歌手に早変わりさせていました。

 

で、そのハヒフヘホを日常的に使っているのは、フィレンツェ人。

hではなくて、cの付くところがしょっちゅうhになってます。

例えば、”buca”

そこら中の道路によく空いている大穴(ローマ人の子孫だとは思えない舗装っぷり)の事で、ブーカと読みますが、

ブーハ。複数形はブーへ

 

フィレンツェ人自身も面白がってhを強調して発音するのは、かの世界的有名商品、

“Coca-Cola”  → ほは ほーら。

これだけいきなり聞いたら、何を言われているのか不明ですよね。

更に長いバージョンは、

“Vorrei una Coca-Cola con la cannuccia corta”

→ ゔぉっれいうなほはほーらほんらはんぬっちゃほるた!?

(短いストロー付きのコカコーラをください。)

 

日本語のはっきりとした「ハヒフヘホ」の発音よりも、間寛平のに近いです。

はい、では寛平ちゃんを思い浮かべて、みなさんご一緒に。

「ほはほーら!」

 

 

でもですね、cの発音を全部hにしている訳でもないです。

その違いはこのビデオでどうぞ↓


フィレンツェ方言というか、トスカーナ方言でもあるのですが、その中でも違いがある事をこのビデオ中でも語っています。

 

 

続けます。

短縮

発音だけでなくて、言い方も結構違ったりします。

例えば、一人称の動詞が短くなります。

vado (行く)が、vo になります。「ヴォ。」

faccio(する)が、fo になり、「フォ。」

 

 

文法的間違い

文法的に間違ってる言い方も、最近認められたそうです。

A me mi garba. 「あ・め・み・がるば」私は好きだ。

文法的に違うのは、自分を指す言葉 meとmiが重複しているからです。

A me mi piace. こっちも同じ意味で、私は好き。という意味。文法的に正しいとされる形は、A me piaceか、Mi piaceのどっちか。

若いもんが、ら抜き言葉を乱発している、、みたいな感覚でもなく、ジジババもよく言います。

 

 

 

言語的なものではありませんが、これはあるあるという例。

渋滞の時は

出先で交通渋滞がひどい時に言うセリフ。

Peggio che sui viali!!  フィレンツェの環状線より酷い!!

なんだかんだで詰まってしまうと身動きの取れなくなる恐怖の環状線の渋滞。

私も100m進むのに50分かかった事があります。

 

 

いつでもどこでもアルノ川

他の都市に旅行かなにかで行って、川があると散歩をしたくなり、言うセリフ。

Si va a fare una passeggiata sul lungarno?  ルンガルノの散歩しに行かない?

ルンガルノとは、アルノ川-arno沿い-lungoの道の事です。

川沿いの道は全てアルノ川沿いだと思っている人たちの頭脳では、たとえそれがセーヌ川でもルンガルノ。パリで川沿いの散歩はアルノ川の散歩っていうことになるらしいです。

最初のsi vaも普通はandiamo(andareの”私たち”の場合の動詞変化)なんですけど、si fa(facciamo)とか、ci si vede (ci vediamo)とかによくなっています。

 

 

 

定冠詞が変。

これはまた文法的なもんなのですが、通常おじさんを意味するzioの定冠詞はloです。lo zio。

ここがなぜか、il zio

サンタ・クローチェ地区生粋のおっさんは、i’ zioになると力説していました。

単数男性名詞の前の定冠詞は確かにilではなくi’になりがちです。

wikipediaにも出ていました。

  • il cane → i’ cane [ikˈkaːne] 犬。
  • il sole → i’ sole [isˈsoːle] 太陽。

この言い方は、フィレンツェからプラートにかけてと、南西はサン・ミニアート、サン・ジミニャーノ、ボッジボンシの一部でのみの限定用法だそうです。

 

 

 

名詞も動詞もなんか違う。

Spegni la luce.  「電気消して。」は通常 「スペンニ・ラ・ルーチェ」と発音するのがイタリア語。

それが、Spengi la luce. 「スペンジ・ラ・ルーシェ」になります。

luceの発音はルーチェがルーシェ、なのはいい(?)として、spegnereスペンニェレはspengereスペンジェレという動詞に変わります。

 

 

 

最後にシナモン水。

L’acqua della cannella 直訳するとシナモン水。

ところがこれは、水道水acqua del rubinettoを意味します。

なんででしょうね、、分かりませんが、しょっちゅう聞く単語です。

これに関してはウンブリア州でも使うようです。

 

 

 

おまけ「言う事聞くのよー」

Da’ retta ダ・レッタ

タイトルにしておいて忘れるところでした。

dar retta が短くなってるだけです。

 

 

 

コテコテのフィレンツェ方言はもう亡くなったおばあちゃんが話していたけれども、単語自体がなんだか違うのもの結構あったような気がします。

ともかく、言い出したらキリがない程たくさんあります。

 

 

アカデミア・デッラ・クルスカ

イタリア語を今でも研究してボキャブラリーを認定したり厳選している機関があります。

それが、Accademia della Crusca あっかでーみあ・でっら・くるすか。

最近のフィレンツェ方言のボキャブラリーのリストなんていうのも作っています。

その本部は現在メディチ別荘カステッロ↓にあります。

メディチ別荘 カステッロ

 

そこにあるスコップの間↓

 

スコップは会員一人一人の札になっていて、モットーとそれを元にした図像が描かれています。

クルスカは小麦の外側の麩を意味し、精製(洗練)することによって、美しい白い小麦粉(言葉)になる事にかけています。

なので、会員のモットーも小麦に何かしら関連したものばかりで、面白いです。

その当時の一流の芸術家が描いた作品もあります。

 

 

では、また!

 

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「バッボ、おとーさん」の語源