フィレンツェ近郊、中心部から西北に7kmほどのカステッロにあるメディチ別荘。
割と近場の別荘なので、中心部からは自転車で30分くらいで行けます。
(最後に急な上り坂があるので普段あまり動かない人はバスかタクシーがおすすめ)
メディチが所有していたのは結構昔の話で、現在この別荘は国の管理になっています。
その統括をする方より庭園内の”動物のグロッタ”を紹介していただける機会があったので行ってきました。
動物の洞窟(グロッタ) Grotta degli Animali
庭園内にある人口の洞窟で、ニッコロ・トリーボロの設計。
16世紀のものです。
![カステッロ 動物のグロッタ](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/07/villa-castello-grotta-animali2.jpeg)
まず、この入り口なんですけれども、これは18世紀になって改修されたので、もともとのデザインとは異なります。
現在見られる柱付きの入り口デザインは、ネオクラシック様式のすっきり目。
対して、オリジナルデザインはもっと自然の洞窟っぽく海から採られた海綿が一面に配されていて、開口部ももっと小さいものでした。
(イタリア語でも海綿って呼ばれるけれども、調べたらコンクリーションというのが正式名みたいです。)
![動物のグロッタ](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/07/villa-castello-grotta-animali1.jpeg)
普段は洞窟の入り口の柵は閉まっていますが、今回は見学の為に開いています!
![動物のグロッタ](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/07/villa-castello-grotta-animali4.jpeg)
内部には、こんな感じのバスタブのような形の水盤と後ろに沢山の動物の彫刻が配されたものがあり、これを1セットとすると、洞窟の中には合計3セットあります。
![動物のグロッタ カステッロ ヴィッラ](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/07/villa-castello-grotta-animali6.jpeg)
彫刻のみならず、天井を見上げてみると、海綿やら貝やらで精密な、かつ不思議な模様が全体を覆っています。
![動物のグロッタ](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/07/villa-castello-grotta-animali5.jpeg)
天井の丸い形の部分は、もともと穴が開いていてそれが後になって塞がれたのだそうです。
こんな↓感じだったのかな?と想像させられるのは、ボーボリ庭園にあるブオンタレンティのグロッタ。
![ブオンタレンティのグロッタ 内部](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2017/12/pitti-grotta-di-buontalenti-soffitto-.jpg)
ブオンタレンティのグロッタについてのブログ記事はこちら↓
話を動物のグロッタに戻します。
![動物のグロッタ 天井](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/07/villa-castello-grotta-animali7.jpeg)
天井の部分をよく観察すると、シャワーのノズル部分のような金属製の部品があります。(写真の中をよく見ると一応写ってるのですが、相当分かりにくいですよね…)
このノズル部分はオリジナルではないのですが、ここから水が出る仕組みというのはオリジナルのデザイン。
壁の中にはこの水を通すための水道管が埋め込まれていて、そのところどころ水溜めのような構造が見つかっています。
それらはおそらく機能的なものというよりも、水の音を出す為のものだろうと考えられています。
どういうことかというと、こちらの動画が分かりやすいかと思います。↓
この動画は、2019年の修復が終わった時のお披露目の様子です。
水が床や天井などいたるところから出てきています。
グロッタの中の彫刻や床に使われている石なども、水に濡れる事によって鮮やかさと光沢を増し、全く違って見えます。
実は、修復は完全にはまだ終わっていなくて、天井の水が出る部分なども合わせて来年よりオリジナルに近い形で復元されるそうです。
ただオリジナルのデザインには水で育つ苔や植物、水に反射して変化し続ける光、水の音、入り口が小さかった状態での暗さ、なども含まれていたので、残念ながら完全なる復元は不可能だそうです。
例えば、水が常に流れていると、こんな状態↓になったりもします。(これもボーボリ庭園内で、アダムとイブのグロッタの一部)
![グロッタ](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/07/grotta-boboli-maschera.jpeg)
面白いですよね。
あと、動物のグロッタにあった彫刻作品らはバルジェッロ美術館に現在展示されています。↓
![アンマンナーティ 雄鶏](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2017/02/bargello-coccode.jpg)
いろいろな鳥のブロンズ像がバルジェッロ美術館にはしれっと展示されていますが、これらも動物のグロッタを賑やかにしていたはず。(鳥だけ鑑賞していてもかわいいです)
現在、これらの模刻作品グロッタの中に設置しよういう計画があるそうです。
庭園の水のデザイン
そして、この動物のグロッタだけでもかなり大掛かりな水遊びになっているのですが、庭園全体で、計画されていたのがわかるのがこの図。
![ヴィッラ カステッロ ウテンス](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/05/villa-medicea-Castello_utens.jpg)
この図を見ると、庭園の上の方にプールのようなものがあるのが分かります。
これは現存しています。これ↓
![ヴィッラ カステッロ アッペンニーノ](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/07/villa-castello-appennino.jpeg)
この人工池まで、二つの水源(メンテナンスがされなくなって久しい水路は使えず、現在は水道水を利用)から水が引かれ、フィレンツェの大きな二つの川、アルノとムンニョーネを表現する2手の小川が庭園を流れ、その後に動物のグロッタを通ります。
その後にさらに、下の二つの噴水へと水が送られます。
二つあった噴水は、現在一つだけになっていて、残っているがこちら↓。(場所は若干移動されていますが)
![アンマンナーティ ヘラクレスとアンテウス](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/07/villa-castello-giardino-ercole-anteo.jpeg)
地理的に庭園の奥の方が高いので、下へ下へと流れてきて水圧が高くなった水は、こちらの噴水では地上から訳5メートルもの高さで吹き上げられていました。
もうひとつあった噴水と、あと上の写真のオリジナル彫刻作品も、今はすぐ近くにあるメディチ別荘ラ・ペトラーイアに展示保管されています。
![ジャンボローニャ ヴィーナス](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/07/villa-petraia-venere-.jpeg)
![アンマンナーティ](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/07/villa-petraia-ercole-anteo.jpeg)
ラ・ペトラーイア、こんな感じの空間があったり、素敵なお勧めの場所です。↓
![ラ・ペトラーイア](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/07/villa-petraia-sala-da-ballo.jpeg)
脱線してしまった話をもどすと、動物のグロッタのバスタブみたいな水盤、ここにも水がためられて、中から水が溢れてくると、この水盤のフチから水が膜のように、もしくは水滴がぽたぽたと垂れてくるわけです。
![動物のグロッタ](https://cupola-e-nuvola.com/wp-content/uploads/2020/07/villa-castello-grotta-animali3.jpeg)
そうすると、海の生き物が表現されたところが、生き生きとしてくるのを想像してみてください…素敵じゃじゃないですか!
で、垂れた水は、下のごく薄い水盤になっている台座のところにたまると、丁度この写真の猫足部分(魚足になってるとこ)にも水が。
生き生きっぷりが、きっとすごい。
もちろん水のあるところには本物の生き物も寄ってくるでしょうし、いいですよね。
庭園全体に趣向を凝らせて、水と光と火と土の錬金術4元素も合わせて緻密に計算されていたデザイン。
“Giochi d’acqua-水遊び” とは言うものの、”水遊び”を超えたもののような気がします。
その他のヴィッラについての紹介ページはこちらです。↓