
もくじ
- 1 ピッティ宮殿 Palazzo Pitti
- 2 パラティーナ美術館 Galleria Palatina
- 3 王宮 Appartamenti Reali
- 4 大公たちの宝物庫 Tesoro dei Granduchi(旧銀器美術館)
- 5 近代美術館 Galleria d’Arte Moderna)
- 6 ファッション・衣装美術館 Museo della Moda e del Costume(旧衣装ギャラリー)
- 7 アンジョリーニの物置 Andito degli Angiolini
- 8 ロシアイコン美術館 Museo delle Icone Russe
- 9 パラティーナ礼拝堂 Cappella Palatina
- 10 いつも開いている訳ではないところ
- 11 ボーボリ庭園
- 12 ピッティ宮殿 インフォメーション
- 13 ピッティ宮殿 関連記事
ピッティ宮殿 Palazzo Pitti
ピッティ宮殿内には、現在4つの美術館と王宮があります。(馬車博物館は閉館中)
中でも一番有名なのはラッファエッロやカラヴァッジョなどの絵画作品コレクションが豊富なパラティーナ美術館。
目立たないながらも他の美術館も素晴らしいの下の案内を参考に時間があれば是非訪れてください。
また、これらの一般見学ゾーン以外の場所も、リクエストや不定期のイベントで見学が可能になる場合がありますで、下記の「 いつも開いている訳ではないところ」にまとめました。
-ピッティ宮殿のなりたち
銀行家ルーカ・ピッティ、ライバルのメディチ家が建てたメディチ邸 Palazzo Medici(現メディチ・リッカルディ宮殿)の扉よりも窓が大きく、ストロッツィ宮殿全体が中庭にすっぽりと入る大きさの、とても野心的な建物を建てようとしたことからはじまります。
実はそれよりも少し前に、パラッツォ・メーディチへの建築案として出されていたフィリッポ・ブルネッレスキのデザインは、ジョルジョ・ヴァザーリによると「豪華すぎて良くない」と却下されていましたが、ピッティ宮殿はその案を下敷きにブルネッレスキの弟子のルーカ・ファンチェッリが設計したものです。
当初は現在の姿よりも横がかなり短いキューブ型で、パラッツォ・メーディチ(の当初の姿)のものとほぼ同じデザイン。建築家選定には政治的動機が影響していたと考えられます。
結局ピッティ家の資金は続かず、未完のままだった建物を購入したのは、コジモ一世の妻であるエレオノーラ・ディ・トレド(結婚持参金が莫大!)。
それから増築、改築が繰り返され、フィレンツェがイタリア王国の首都だった時代には、ここに国王ヴィットーリオ・エマヌエーレ二世が住んでいました。その王宮部分も見学可能。
パラティーナ美術館 Galleria Palatina

プロメテウスの間 Sala di Prometeo
フィリッポ・リッピのトンド・バルトリーニが右側の壁中央にあります。部屋には他にもボッティチェッリ、シニョレッリ、ポントルモ、ピエロ・ディ・コジモなどの作品も。
ラ・ヴェラータ(ヴェールの女性) -ラッファエッロ・サンツィオ
白い布の素材を美しく描き分けています。美術館内には他にもラッファエッロの作品が多く展示されています。いくつかの部屋に点在しますので、お見逃しなく!


マルスの間 Sala di Marte
ピエトロ・ダ・コルトーナによる天井画です。メディチ大公子が神々の教育を受けて成長していく様が描かれています。メディチの紋章も絵の中に見られます。
ストーブの間 Sala della Stufa
ピエトロ・ダ・コルトーナがピッティ宮殿内に描いた最初の作品。テーマは黄金の時代、銀の時代、青銅の時代、鉄の時代。写真の絵は黄金の時代の一部。まだ世界が平和で争いもなく、動物と人は共生し、食べ物も何もしないでも手に入るクロノスの時代です。


ポッチェッティのガレリア Galleria del Poccetti
天井画を描いたとされる画家の名前がポッチェッティなので、ポッチェッティのガレリアと呼ばれるのですが、実際のところはポッチェッチの弟子チンガネッリが描いています。大公の区画と大公妃の区画(ヴォルテッラーノの区画)を繋ぐ通路だったもが改装された部屋です。
ヴォルテッラーノの区画 Quartiere del Volterrano
大公妃の為の部屋が続く区画。1600年代のフィレンツェの画家、ヴォルテッラーノの天井画がある為に”ヴォルテッラーノの区画”と呼ばれます。写真はその最初の部屋。中央の彫刻作品は少年の頃のミケランジェロでマスクを彫っている様子です。エミリオ・ゾッキの作品。閉まっていることもある区画です。

ラッファエッロ、カラヴァッジョ、フィリッポ・リッピ、ロッソ・フィオレンティーノ、カノーヴァ、ピエトロ・ダ・コルトーナ、アルテミージア・ジェンティレスキなど数多くの作品がクアドレリーアと呼ばれる壁一面に絵画を並べる形式で展示されています。
目当ての作品を探してもいいし、じっくり滞在して知らなかった作品に惹かれたり、ふとした新しい発見も楽しめる場所です。
各作品の額縁に画家の名前が入っていたり、いなかったりと、そのままだと分かりにくいですので、ガイドブックを手前にあるブックショップで買っておくのもおすすめ。
もしくは、上記の気が向いただけの説明よりも私がちゃんと案内するガイドツアーもやっています。
王宮 Appartamenti Reali
ピッティ宮殿内で3世紀に渡って使用されたプライベートの居住区が見学可能。
2025年に修復後再オープン、見学には別途予約が必要です。(追加料金なし)
1700年代の初めは大公子フェルディナンド・デ・メディチが居住し、1700年代の終わりから1800年代の前半にかけてはロレーヌの大公たちによって改装も施され、1865年から1871年までフィレンツェがイタリア王国の首都だった時代にはサヴォイア家の王家の居住区になりました。
最後のサヴォイア家時代の装飾がより強く残る中にも、メディチ、ロレーヌ時代の家具なども見られます。

楕円型のガビネット Gabinetto Ovale
宮殿内に唯一残るロレーヌのピエトロ・レオポルド時代の室内装飾。1700年代後半に流行った中国趣味が反映されています。
王の部屋 Camera del Re
この部屋にあるのは1700年代のロレーヌの時代に作られたベッド。それから100年ほど後にサヴォイア家の紋章が入れられました。


礼拝堂 Cappella
ピッティ宮殿内に複数ある礼拝堂の一つ、1765年に改装された際のものです。
大公たちの宝物庫 Tesoro dei Granduchi(旧銀器美術館)
展示されているコレクションからメディチ家の系譜を別の角度から探る事ができます。最後のメディチ家当主、ジャン・ガストーネが亡くなった寝室も通ります。
見逃されがちなのは上の階、あまり大きくはない階段が順路の途中にあります。
階段を上って右側には、メディチ最後の女性アンナ・マリア・ルイーザのコレクションやメディチにゆかりの深い展示品、
左の奥には現代まで続くジュエリー寄贈作品が展示され、ファッションフリークでなくともその美しさと精巧さには目をみはらせられます。

ロレンツォ・デ・メディチのデスマスク
メディチの偉大なるロレンツォのデスマスクです。チケットチェックの人がいる入り口より、左手にある部屋にあります。
大アイアースの中庭 Cortile di Aiace
滅多に開かない場所の一つでしたが最近は順路に含まれます。中庭中央には、この中庭の名前になっている大アイアースの彫刻(紀元1世紀)が置かれています。


コレクション クリスタルの魚
水晶には魔力があると信じられており、毒を避けるため、飲み物を入れるのに使われていました。
コレクション
実物はかなり小さいです。3cmほど。

近代美術館 Galleria d’Arte Moderna)
パラティーナ美術館の上の階にあるのが、ピッティ宮殿近代美術館
あまり人が来ませんが、開かずの間(係員が少なく、ほぼいつも閉まっている。)も含め、ピッティ宮殿の隠れた宝でもあります。
主に1700年代から第二次世界大戦中までの作品を収蔵。マッキア派のコレクションなども充実。
途中にあるガラスの自動扉を先に進むと、ポッチャンティの階段があります。
ふざけた名前に聞こえますが、設計した人の苗字です。
モニュメンタルな美しい階段なので、せっかくマイナーなこの美術館まで足を伸ばしたのであれば是非おすすめです。

ガリレオ・キーニ
イタリアのリバティースタイル(アール・ヌーヴォー様式) で1900年代初頭、陶製のプロダクトで有名なキーニの絵画作品です。
ムッソリーニをモデルにした作品 -レナート・バルテッリ
この一風変わった作品は、近代美術館の奥、あまり開いていることのない部屋の片隅に見つけることができます。レナート・バルテッリ作、Profilo continuo(続く横顔)もしくはDUX(ラテン語の総統、この場合はムッソリーニ)ファシズム時代に制作されました。ムッソリーニの横顔が360度グルグルと永遠に続きます。


Primi passi -最初のあゆみ アドリアーノ・チェチョーニ
とても愛らしい作品なのですが、展示方法によってはびっくりしている子供に見える不思議…。(現在は配置が変わっています)
ポッチャンティの階段 Scalone monumentale del Poccianti
最上階である近代美術館から地上階のブックショップ脇まで、一気に降りてゆけます。ここへ入る入り口は美術館の順路中程にあるガラスの自動ドアです。階段は下りのみの一方通行。

ファッション・衣装美術館 Museo della Moda e del Costume(旧衣装ギャラリー)
ピッティ宮殿の南側端っこにある”メリディアーナのパラッツィーナPalazzina della Meridiana”の中にあります。
この建物はロレーヌのピエトロ・レオポルド大公時代1776年より1839年にかけて建てられました。
行き方はまず、ピッティ宮殿内の近代美術館のある階まで行き、表示に従って右方向にしばらく進むと行きつけます。
国立初の衣装とその歴史を扱った専門の美術館で、18世紀から現代にかけての衣装の他に、コジモ一世とその妻エレオノーラ・ディ・トレド、息子のガルツィア弔われた時に身に付けていた実際の衣装も展示されています。
常設展示の他に、テーマごとのファッション関係の特別展が催されます。

エレオノーラ・ディ・トレドの衣装
ファッション・衣装美術館にある、ちょっと薄暗い部屋。そこにあるのは、1500年代の本物の衣装(死装束)、コジモ1世、その妻エレオノーラ・ディ・トレド、息子ガルツィアのものなど見ることができます。部屋が薄暗いのは衣装の保護の為です。
ドルチェアンドガッバーナ
2017年の企画展Il Museo Effimero della Modaの際の展示品。ドルチェアンドガッバーナ2013-2014年の秋冬コレクション。ビザンチンのモザイクがテーマになっています。


メゾン・マルジェラ
2019年の企画展Animalia fashionの際の展示品。ジョン・ガリアーノデザインの服。詳しくはブログをどうぞ→ フィレンツェ動物界なファッション展。ピッティ宮殿です。
サンダルを履いた足 古代彫刻
2019-2020年の企画展Ai Piedi dei Deiの展示作品。古代彫刻の足にみられるこのサンダルは、ローマ時代男女問わず使われていて、長距離を歩くに便利だったそうです。

アンジョリーニの物置 Andito degli Angiolini
パラティーナ美術館と近代美術館の間にある中間階の展示スペース。企画展に使われます。

Buffoni, Villani e Giocatori alla Corte dei Medici
作者不明、17世紀のトスカーナ画家による作品。この作品に出てくる小人症の道化師など「メディチ宮廷の道化師、田舎者、遊び人」がテーマの2016年の展覧会。
Kiki Smith. What I saw on the road
2019年前半、キキ・スミスの展覧会。→ Kiki Smith. What I saw on the road


Neo Rauch Opere dal 2008 al 2019
Neo Rauchの2008〜2019年の作品展示。会期は2019〜2020年にかけて→ Neo Rauch Opere dal 2008 al 2019
ロシアイコン美術館 Museo delle Icone Russe
16〜18世紀に制作されたロシアのイコン、メディチ家とロレーヌの60点以上あるコレクションの一部が展示されています。
ピッティ宮殿中央の中庭、入り口から見て右側にあります。(クロークとカフェテリアの間。)

ロシアイコン 洗礼者ヨハネの斬首
1590-1610年頃の作品。17世紀よりメディチ家のコレクション入り。
作品右側にいるのは洗礼者ヨハネ、牢獄から出てきて天にいる神を仰ぐところ。左側はヨハネの斬首シーン、下にある入れ物の中にはその切られたヨハネの首。非常に手の込んだ細工がなされています。
ロシアイコン展示室 天井
ロシアイコンが展示してあるのは、1661年、当時の太公子コジモ三世の結婚式の折に夏の居所として改装された部屋です。

パラティーナ礼拝堂 Cappella Palatina
中庭に面した地上階にあるパラティーナ礼拝堂。ピエトロ・レオポルドの1765年より小さな教会として改装されました。上記のロシアイコン美術館と続きになっています。

パラティーナ礼拝堂 祭壇
祭壇に使われたのは、完成に至らなかった大公たちの礼拝堂(メディチ家礼拝堂内)の祭壇用に制作されたフィレンツェモザイク(コンメッソ・フィオレンティーノ)のパネルです。祭壇の後ろの壁の中には女性用の席があります。現在も教会として機能しています。
いつも開いている訳ではないところ
ピッティ宮殿内には普段一般公開している以外にも多くの部屋があります。
記念日や特別展、プロジェクトなどでたまに入れる場合がありますので、そのいくつかを紹介します。

クチノーネ(大台所) Cicinone
日常的に大人数の宮廷で、招待客が更に沢山の宴などにも対応できる大台所。1500年代フェルディナンド一世の時代に造られました。奥の壁に見える三角形のような形は、大きな換気扇(排気口)、その下には薪で使うコンロが並びます。
パラティーナ美術館内にある受付(Sala di Castagnoli)で予約すると入れるので、割とアクセスしやすいです。オフィシャルサイトに動画あり。
アオスタ公妃の居住区 Appartamenti della Duchessa d’Aosta
企画展の時などにアオスタ公妃の居住区の部屋が使われることもありますが、調度品などを鑑賞するには申し込みをして見学するのが一番です。
見学をした時のブログ記事→ あれ、見た事ある : 非公開のピッティ宮殿の区画


アオスタ公妃の居住区よりのぞむボーボリ庭園。
見学の参加人数が少ない場合は、係の人しか入れない中庭のテラスに出られるかもしません。(見学コース外です)
ピッティ宮殿のテラス
ピッティ宮殿の非公開部分のテラス。後ろに見えるのはピッティ宮殿前の広場。グッチファッションショーのガイドをした時のものです(筆者は左。右は友人中国語ガイド、ご紹介可能。)ブログ記事→ GUCCIのファッションショーにガイドとして参加しました


アラッツィ(タペストリー)の居住区 Appartamento degli Arazzi
洗濯物が干されていたり、髪の毛を洗っていたり、宮殿の中としては少し珍しい天井画。アラッツィの居住区にあります。アレッサンドロ・アッローリによるフレスコ画です。
マリア・ルイーザの浴室 Bagno di Maria Luisa di Borbone
ロレーヌのピエトロ・レオポルトと妻、マリア・ルイーザのプライベートの空間にある1700年代の浴室です。写真はマリア・ルイーザの浴室。お湯と冷水が蛇口をひねるだけで出てきたり、ジェット水流でマッサージができたりと、最新の技術が使われていました。


ピエトロ・レオポルドの浴室
上記のマリア・ルイーザの浴室の隣。周りの穴のところは、手すりがあった跡です。同じく温水と冷水が出ます。 →オフィシャルの動画。
ボーボリ庭園
ピッティ宮殿の後ろ側には広大な敷地を誇るボーボリ庭園があります。
チケットがピッティ宮殿とは別に、裏側にあるもう一つの庭園バルディーニと共通になりましたので、別ページとしてまとめました。
ピッティ宮殿 インフォメーション
-所在地
Piazza de’ Pitti 1
チケット売り場: 宮殿右翼
入り口: 宮殿中央の門
(チケットを入手してから入り口へ。フィレンツェカードの場合は、入場後ブックショップでカードを有効化)
-開館時間
火-日 8:15-18:50
(最終入館時間は閉館1時間前)
-休館日
月曜日、1月1日、5月1日、12月25日
まれに職員の会合やストライキなどにより臨時で閉まる事があります。
-ピッティ宮殿 入場料
ピッティ宮殿内全ての美術館共通チケット
(パラティーナ美術館、近代美術館、太公たちの宝物館、ファッション衣装美術館)
大人: 16ユーロ
17歳以下: 無料
時間指定予約料: +3ユーロ
*ボーボリ庭園は別チケットです。同じ窓口で購入可能。
-所要時間目安
- パラティーナ美術館 約1〜2時間
- 近代美術館 約1〜2時間
- 大公たちの宝物館 約30分〜1時間
- ファッション衣装美術館 約30分〜1時間
- ロシアイコン美術館+パラティーナ礼拝堂 約15分
-ピッティ宮殿オフィシャルページ
-ピッティ宮殿チケット予約公式ページ
–B-ticket–
-注意事項
- 水の持ち込みは500mlまで
- 無料クロークあり。長傘、大きなカバン、リュックは預け。