夢っていうのは、
電車の切符を買えば叶います。
という事で、行って来ましたジェノヴァ。
フィレンツェからは微妙ではありますが、割とアクセスは良いです。
ピサ経由直通のフレッチャビアンカで約2,5時間。
なにが夢だったかったかというと、墓地。Cimitero monumentale di Staglieno モニュメンタル墓地スタリェーノ。
イタリアの墓地、いいところが多いです。
例えば、ミラノ中央駅の裏にある墓地も最高。
フィレンツェには小さく美しいCimitero degli Inglesi イギリス人墓地(と言ってもイギリス人だけでなく、カトリック以外の人たちの墓地です。)
Cimitero della Misericordia o dei Pinti ミゼリコルディアもしくはピンティ墓地、などあります。
スタリェーノ墓地
こちらが、ジェノヴァのスタリェーノ墓地。後ろにパンテオン、ローマのちっちゃい版コピーです。手前の彫刻はla fede – 信徳を表します。
パンテオンの中 アダム
こちらはパンテオンの中にあるアダムの像。へそがありません。アダムは母親のお腹から生まれたのではなく、神によって創造されたので、臍なしで表現されているらしいです。
スタリェーノ墓地 内部の様子
廊下の両側にびっしりお墓。それぞれ違う彫刻が施されています。この廊下だけでも沢山あるのに、この何倍もあるのです。全部を2時間では見切れませんでした。
信徳、犬は忠誠を表します。この作品を作った彫刻家の奥さんの墓です。後妻の墓も少し離れた所にあり、同じテーマです。
細部を見てもそれぞれに面白い。
大量の埃をかぶっているけれども、雲の表現が逆に引き立っている?女性のショールのレースなど、ものすごく細かく作られています。ジェノヴァのレアリズムらしいです。ジェノヴァアカデミアの多くのメンバーがこの墓地の為に制作をしています。
復活の天使 ジューリオ・モンテヴェルデ
この天使の像はスタリェーノ墓地のシンボル的な存在。不思議な魅力を放ちます。
ジューリオ・モンテヴェルデの代表作。
その他にも色々。
亡くなった父親のモミュメントに母と共に挨拶を・・・。母の足元には同じくまだ幼い長男の彫刻。
こちらは、死から逃れようとする女性。
しかし死と同じ衣をまとっていて、逃れきれない事を表しています。女性の頭の上に蝶々が乗ってます。これも飛び去ってゆく魂の様を表しています。
扉が少し開いていて、そこから天使の力を借りて天に昇っていく様子。
ミニパンテオンを後ろに。彫刻に静かに語りかけられているようです。
外にも小さなお墓というより、小さな家のような家族墓地が続きます。森みたいになっている所も墓地です。それぞれに凝った建築です。
こんな感じで、木で隠れていて見えないところにもびっしり。残念ながら崩れかけているところも多くありました。
屋外の墓も色々。
小さな天使が沢山いました。よくよく見ると全てこの一帯は子供の墓でした。
よく墓で目にするシンボル、砂時計に羽、尻尾を噛んだ蛇。砂時計は砂が下に落ちる様を人の体が土に戻る様子、それと時を表し、それに状態の動きを表す羽がよく付け加えられます。羽は死者の魂の供をするメリクリウスのものでもあります。尻尾を噛んだ蛇はウロボロスと呼ばれ、永遠、再生、不死、循環する時、を表します。
カテリーナ・カンポドーニコの墓
修復はされていますが、スカートの裾部分にある黄ばみは灯の火によるもので、残念ながら取れないそうです。
このお墓の彫刻となっている人物、Caterina Campodonico カテリーナ・カンポドーニコのお話が残っています。
1804年生まれのカテリーナ。
彼女は貴族でもなんでもない庶民なのに、こんな立派なお墓。なぜでしょう。
この時代、お墓を持つというのは特に一般の女性にとっては難しい事でした。
ですが、それと同時にちゃんと埋葬してもらうという事は、一生の暮らしと同じくらい大切な事だったので、親類がいない場合や貧しい人たちには、彼らを手助けする組織も存在しました。
このカテリーナはごくごく普通の家の出で普通に結婚をしますが、結婚相手が怠け者の上にアルコール依存でした。彼女は独立心のある強い女性だったので、あっさり別居していまいます。しかも3000フランというその当時としては多額の手切れ金のようなものを払って。
生まれつきの商才があったのか、旅をしながらネックレス状になったヘーゼルナッツとカネストレッロと呼ばれるドーナッツ型のお菓子を行く先々で売り、その商売がとても上手くいったのでかなりの収入を得るまでになります。
ところが、1880年になって重い病で倒れます。その病床で意識のある彼女の目の前であるにかかわらず、親類が彼女の遺産の話で大論争を繰り広げます。
奇跡的に病から回復した彼女がまず一番最初にした事、それはLorenzo Orengo ロレンツォ・オレンゴという当時高名であった彫刻家への自分の墓の彫刻の依頼。それまで貯めていた全ての貯金を使ったわけです。作品は1881年に完成し、スタリェーノ墓地に設置されます。彼女はその像の横に自らも立ち、大変誇らしげだったそうです。
その翌年、1882年に亡くなり、希望したとおり彼女自身のモニュメントのお墓に埋葬されました。手に持つのは彼女が売っていたヘーゼルナッツとカネストレッロ。
今でも、魅力的に誇らしげに見えます。
スタリェーノ墓地インフォメーション
最後の作品のように修復の手が入っているのは、まだほんの一部です。
少しずつではありますが、現在も修復が進んでいます。その進行状況なども下記のオフィシャルサイトで見ることができます。(ドネーションもできます)
ナポレオンによって街の中心地に墓を作る事を禁じられたので、特に1800年代の墓地が少し離れたところに多く作られました。
イタリア各地にこういったモニュメンタルな墓地があるので、機会があったら是非訪れてみてください。
あと、今回かなり見逃したお墓もあります。著名人のお墓リストはこちらをご参考にどうぞ。↓
wikipediaイタリア語版 Cimitero monumentale di Staglieno
–オフィシャルサイト
Cimitero Monumentale di Staglieno
–場所
Cimitero Monumentale di Staglieno
Piazzale Resasco
16137 Genova
–入場可能時間
毎日 7:30-17:00
12月25日と復活祭は7:30-13:00
休日: 1月1日、1月6日、復活祭の翌日、6月24日、8月15日、12月26日
–アクセス
ジェノヴァ-ブリニョーレ駅より 14番バス
ジェノヴァ-プリンチペ駅より 34番バス