もくじ
-ウフィツィ美術館のなちたち (それと、よく間違われる発音について)
ウフィツィ美術館の元々の用途は、13の省庁を入れる建物としてでした。
コジモ一世の命を受けたジョルジョ・ヴァザーリが1560年に設計。
“ウフィツィ” という名前はイタリア語の”役所”を表す単語で、今でも役所であった名残を建物の造りから見る事ができます。
→イタリア語の役所 – Ufficio/Uffici(単数形/複数形) 宗教や伝統的な使い方の役所 – Uffizio/Uffizi
発音はどちらかというと”ウッフィーツィ”が近いです。
ウフィティでもウフィッチでもウフィッツでもありません。
そして”Gli Uffizi”と定冠詞のGliをつけて言うので、”lgぃ ウッフィーツィ”と、カタカナで書けない発音になります(!)
ウフィツィ美術館 館内と所蔵作品
現在のコレクションはメディチ家の所有していたものに加えて、ウルビーノ公デッラ・ローヴェレ家の最後の人物であるヴィットーリアが、フェルディナンド2世との婚姻によってフィレンツェにもたらしたウルビーノのコレクション、
それに加えてロレーヌ時代のもの、コンティーニ・ボナコッシコレクションの寄贈、枢機卿レオポルドが始めた自画像コレクションなどなど。
現在でもオークション出品作品など重要であると認められると国の予算で購入されるなど、膨大な作品点数になります。
-最上階(イタリア式2階)
1200年代〜1300年代、ルネサンス、フランドル絵画コレクション等。
ウフィツィ美術館のメインとなる作品が最上階にあります。
ウフィツィ美術館 第一廊下
美術館に入って順路の一番最初はこの最上階。グロテスク様式の天井画に覆われています。この廊下の左手にある間口から絵画作品展示の各部屋へ入ります。
グロテスク様式の天井画
こんな面白い細部も見つけることもできます。他にも色々ありますので探してみてください。
春(ラ・プリマヴェーラ) - サンドロ・ボッティチェッリ
ルネサンス時代を代表るボッティチェッリの作品。美しいだけでなく、難解で複雑なメッセージが含まれています。細部まで丹念に描かれたオリジナル作品は、絵具の発色や質感がとても美しく、高画質の写真でも再現できないものです。
聖母子と天使 - フィリッポ・リッピ
ルネサンスを代表する画家、フィリッポ・リッピの作品。モデルとなったのは、ルクレツィア・ブーティ修道女、画家リッピも同じく修道士、聖職者同士にも関わらず関係が生まれスキャンダルとなりますが、その後メディチの老コジモの仲介により二人とも還俗します。同じ展示室内の別作品ではフィリッポ・リッピ本人の姿が描かれているのが見られます。
トリブーナ
最上階、第一廊下の途中にある特別なこの部屋、大公フランチェスコ一世が、ブオンタレンティに設計させ1570年代に完成しました。それから各時代の最高の作品がこの部屋に置かれることになります。ヨーロッパ各地にある”wunderkammer-驚異の部屋“のひとつでもあり、錬金術の考えが設計自体に含まれます。フランチェスコ一世はヴェッキオ宮殿にも同じ考えを元にした書斎をつくらせています。この写真の中央に見えるのは、メディチのヴィーナス。ウフィツィ美術館が開館した1700年代後半はこの作品が目玉作品でした。ナポレオンに一度持ち去られますが、現在は無事にここでオリジナルを見ることができます。
受胎告知 - レオナルド・ダ・ヴィンチ
レオナルド・ダ・ヴィンチ若かりし頃、師匠アンドレア・デル・ヴェッロッキオの工房を独立して初めて一人で描き上げた作品です。数学者としての一面も見られる計算され尽くした作品です。遠近法と騙し絵の手法が取り入れられており、現在の展示室に入った時の角度くらいから鑑賞するのが画家が狙った場所になります。この二人の登場人物がいる場所はフィレンツェの丘の上の教会前とも考えられます。そこは、作品が実際に置かれていた教会です。
聖家族 “トンド・ドーニ” - ミケランジェロ・ブオナッローティ
フィレンツェの貴族、ドーニ夫妻に長女が授かった折の注文作品。ミケランジェロがデザインした額縁に夫婦の紋章が見られます。後には古代彫刻に影響を受けたポーズの裸の人たち、前面には幼いキリストとマリア、ヨセフの聖家族が描かれており、複雑な構成はキリスト教の考えに基づいていると考えられます。
ひわの聖母子 - ラッファエッロ・サンツィオ
ウフィツィ美術館の有名な作品のひとつ、若きラッファエッロがフィレンツェ滞在時に描いた”ひわの聖母子”。手前左の洗礼者ヨハネと、右側のイエス・キリストが手にしているのが鳥のひわ、キリスト教において受難のシンボルです。制作年は1506年頃、その後の1547年にコスタ・サン・ジョルジョ通りにあった注文者の家もろとも落石で破損してしまいます。1520年に没したラッファエッロ本人の修復は叶わず、友人かその周辺にあった者の手により修復、そして近年はフィレンツェの修復工房オピフィーチョ・デッレ・ピエトレ・ドゥーレにて現代の修復がなされています。レオナルド・ダ・ヴィンチ、ミケランジェロの影響を受けつつもラッファエッロ独自の調和の取れた名作です。
眠れるエルマフロディート(ヘルマプロディートス)
この美しい背中を見せる古代彫刻には秘密があります。是非、一周歩いて全体を鑑賞してみてください。両性具有の神です。
-1階(日本式2階)
最上階より1階へ降りる階段+エレベーターは二ヶ所あります。
1階には、コンティーニ・ボナコッシコレクション、自画像コレクション、1500年代の絵画、1600年代の絵画コーナーがあります。
長い首の聖母 – パルミジャニーノ
マニエリスム絵画で最も重要な作品の一つ、パルミジャニーノの長い首の聖母。1500年代絵画コーナー。
ビア・デ・メディチの肖像 - アーニョロ・ブロンズィーノ
コジモ1世が結婚する前にもうけた庶子ビアンカ、通称ビア。父や祖母にとても愛されて育ちますが、5歳の時に亡くなってしまいます。この肖像画はその愛らしい姿を永遠に残します。メディチ家のメンバーの肖像画を多く描いたブロンズィーノの作品。
エレオノーラ・ディ・トレドと息子ジョヴァンニの肖像 - アーニョロ・ブロンズィーノ(部分)
コジモ1世の妻、ナポリ副王の娘、エレオノーラ・ディ・トレド。彼女の手の美しさの活かすため、本来いつも嵌めている指輪なしで描いた肖像画。非常に綿密に描かれているドレスは実在しなかったと考えられます。
ウルビーノのヴィーナス - ティッツィアーノ・ヴェチェッリオ
ティツィアーノの代表作。1500年代絵画コレクションの区画の奥にあります。エドゥアール・マネがオランピアで参照した作品です。ティツィアーノ自身は彼の友人であり師匠でもあるジョルジョーネの眠れるヴィーナスに影響を受けています。その作品をジョルジョーネの没後に仕上げたのもティツィアーノ。この作品の注文者デッラ・ローヴェレ家グイドバルド二世、その妻のジューリア・ダ・ヴァラーノの肖像画は、同じくフィレンツェのピッティ宮殿にあります。
メドゥーサ - カラヴァッジョ(ミケランジェロ・メリージ)
とても迫力のあるこの絵、鬼気迫ります。カラヴァッジョが忘れ去れて居た時代は、装飾用の武具コレクションのひとつとして保存されていました。騎馬像の片手にこの作品を持たせて展示がされていたと考えられています。1600年代絵画コーナにあります。
リュート奏者と晩餐 - ゲラルド・デッレ・ノッティ
フランドルの画家で、ヘラルト・ファン・ホントホルストGerard van Honthorstが本名。イタリア人にとって発音しにくい名前なので、”ゲラルド・デッレ・ノッティGherardo delle Notti”と呼ばれます。デッレ・ノッティは”夜の”を意味して、夜のような暗い画面中の光の表現を得意とした画家です。この作品、楽しそうな宴の中ですが、さあ、この人たちは何をしているでしょう?右の男性の口の中に食べ物を入れているのか、出しているのか?
ガリレオ・ガリレイの肖像 – ジュストゥス・スステルマンス
ガリレオは破門された後、トスカーナ太公の庇護の下フィレンツェのアルチェトリで余生を過ごします。その時期に描かせた肖像画。ガリレオの霊廟は同じくフィレンツェのサンタ・クローチェ教会にあります。
-コンティーニ・ボナコッシ コレクション
コンティーニ・ボナコッシ夫妻が1969年に国に寄贈したコレクションが集められた部屋。
コレクションを一箇所にまとめて展示する事を望んだ夫婦の意向がようやく実現したのが現在の展示室です。
最上階にあるカフェテリアから下の階に降り、左手にあるのがこのコレクションルーム。
聖ロレンツォ - ジャン・ロレンツォ・ベルニーニ
上記のコンティーニ・ボナコッシの一点。まだ若きベルニーニ(19歳頃)が制作した聖ロレンツォ像で、彼の若いながらも卓越した技術と表現が見られます。聖ロレンツォは格子の上で火に焼かれ殉教したキリスト教の聖人です。作品の台座部分(木製)は火を表現しています。
カーザ・パッツィの聖母子 – アンドレア・デル・カスターニョ
画面上部の多くを占める円形は、レリーフかパッツィ家の紋章が入っていた跡ではないかと考えられます。
-自画像コレクション
以前ヴァザーリの回廊内に展示されていたものが、2023年よりウフィツィ美術館内に展示されるようになりました。
所蔵作品は1000点以上あるので、入れ替え式での展示です。
最上階カフェテリアから下の階へ行き、左手にあるのがコンティーニ・ボナコッシのコレクションルームで、右手にあるのが自画像のコレクションルームです。
ピンク色の壁が目印。
ラッファエッロ・サンツィオ 自画像
美術館内外を彷徨った後、ようやく現在の自画像コレクションルームに展示になりました。
レオポルド枢機卿 – ジョヴァン・バッティスタ・フォッジーニ
メディチのレオポルド枢機卿。彼の集めた芸術家の自画像コレクションが元になっています。現在国の管轄になっても、コレクションは増え続けています。
ルーベンス 自画像
ピーテル・パウル・ルーベンスの自画像。同時期のレンブラントが多くの自画像を残したのに対して、ルーベンスは少なく、ウフィツィ所蔵二点の内の一点。
アドルフォ・ヴィルト 自刻像
私の知る限り、フィレンツェに一点しかないヴィルト作品。
多くはミラノにあります。ブログ→ ミラノで一番の観光スポットはここ!: アドルフォ・ヴィルト
草間彌生 自画像
現代美術家の自画像もあります。こちらは世界的に有名な日本人アーティスト、草間彌生の自画像。2010年作。
-ヴァザーリの回廊
ウフィツィ美術館は、お隣にあるヴェッキオ宮殿とアルノ川の向こう側のピッティ宮殿とは1565年に増築されたヴァザーリの回廊でつながっています。
詳細はこちら↓
ウフィツィ美術館 インフォメーション
-所在地
Piazzale degli Uffizi, Firenze
-開館時間
火-日 8:15-18:30
(チケット売り場は18:05まで)
-休館日
月曜日、1月1日、5月1日、12月25日
まれに職員の会合やストライキなどにより臨時で閉まる事があります。
-入館料
€25 (12月21日〜1月9日/2月21日〜11月9日)
€19 (1月10日〜2月20日/11月10日〜12月20日)
時間指定予約はそれぞれ+€4
※フィレンツェカード利用だと入館料はカードに含まれますが、時間指定予約を別にする必要があります。
-所要時間
1時間〜1日
-ウフィツィ美術館 館内マップ
分かりやすいウフィツィ美術館オフィシャルサイトのリンクです。↓
<<LE GALLERIE DEGLI UFFIZI>>
-ウフィツィ美術館オフィシャルページ
–LE GALLERIE DEGLI UFFIZI -Gli Uffizi–
-ウフィツィ美術館チケット予約購入公式ページ
–SITO UFFICIALE DELLA BIGLIETTERIA DEI MUSEI STATALI FIORENTINI–
-注意事項
- フラッシュなしで私的利用の写真撮影可能。動画撮影禁止。三脚、自撮り棒使用禁止。
- 水の持ち込みは500mlまで。水筒禁止。
- 入るとすぐにメタルデテクター(金属探知機)を通ります。その時に危険と判断された刃物やハサミは、その場に預ける事になります。